障がい者雇用成功のカギは採用プロセス(1)[橋本 一豊]

橋本一豊2

近年、障がいのある人の就労の場が広がってきており、企業のさまざまな創意工夫により戦力として育て上げていく障がい者雇用の成功事例も増えてきている。一方で、雇用を進める中で業務適正が合わない等のミスマッチ拡大という現状もあり、採用と退職を繰り返すことによる企業の雇用意欲の低下、障がいのある人の就労意欲の低下という悪循環が懸念されている。今後は、雇用の広がりとともに、定着率を高めるための障がいのある人の特性を生かした雇用を実現することが重要な視点となるであろう。(特定非営利活動法人WEL’S新木場=橋本一豊)

では、定着率を高めるためにはどのような視点が必要になるのであろうか?

現在、障がいのある人が戦力として活躍している企業の多くは、雇用の準備段階からのスタディー、チーム結成、環境整備、ハローワークとの情報共有、労働、福祉、教育、医療等関係支援機関との連携、企業間ナレッジの共有など丁寧なプロセスを構築し雇用促進に取り組んでいる。また、定着率も高いことがこれらの企業の共通点として挙げられる。

本コラムでは、こうした企業の雇用事例をヒントに、障がい者雇用の成功のポイントを紹介していきたい。

(参考)実雇用率と雇用されている障害者の数の推移(出典:厚生労働省)
(参考)実雇用率と雇用されている障害者の数の推移(出典:厚生労働省)

■ 障害者雇用促進法と障害者雇用率

企業がまず障がい者雇用と関わるきっかけとなるのは、「障害者の雇用の促進等に関する法律(以下、障害者雇用促進法)」に基づく障害者雇用率制度であるケースが多いであろう。

「障害者雇用率制度」では民間企業、国、地方公共団体は、一定の割合(法定雇用率)に相当する人数以上の障がい者を常用労働者として雇用することが義務づけられている。

事業主区分ごとの法定雇用率の割合
事業主区分ごとの法定雇用率の割合

民間企業を例に取ると、常用労働者100人の企業なら2名、500人の企業なら10人の雇用義務があるということになる。なお、常用労働者数に法定雇用率を乗じた数が1に満たない場合(常用労働者数50人未満の企業)は障がい者の雇用義務はない。

■ 障害者雇用状況報告と障害者雇用納付金制度
従業員50人以上の事業主は、毎年6月1日現在の障がい者の雇用に関する状況(障害者雇用状況報告)をハローワークに報告する義務がある。(障害者雇用促進法43条第7項)

また、「障害者雇用納付金制度」により、障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図るとともに、全体としての障害者の雇用水準を引き上げることを目的に、雇用率未達成企業(常用労働者200人超)から納付金(法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて1人につき月額50000円)を徴収し、雇用率達成企業に対して調整金、報奨金を支給するとともに、障害者の雇用の促進等を図るための各種の助成金を支給している。

なお、平成27(2015)年4月から常用雇用労働者数100人超の事業主が納付金徴収の対象に拡大される。

■ 障害者雇用に関する各種相談・支援機関

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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