オルタナ総研統合報告書レビュー(46):日本ガイシ

記事のポイント


  1. 日本ガイシは2050年の脱炭素社会に向けて事業転換を図る
  2. 内燃機関向け製品の50年の売上高をEV化によって0円と想定した
  3. デジタル化も進むことで、事業ポートフォリオの見直しを進める

日本ガイシは、2050年のカーボンニュートラル社会を見据えて、事業転換を図る。自動車の内燃機関向け製品の売上高の構成比は60%を占めているが、EVへの切り替えが進むことで売上高は0円になるというシナリオを描いた。脱炭素とデジタル関連製品の売上高の構成比は2030年に50%、2050年に80%を占めるようになると見込む。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)

日本ガイシは、「NGKグループビジョンRoad to(ロードトゥ) 2050」で、2050年の「ありたい姿」を示した。「独自のセラミック技術でカーボンニュートラル(CN)とデジタル社会(DS)に貢献する」に設定した。

売上高の構成比60%を占める自動車の内燃機関向けの売上高をEV化により0円と想定し、CNとDS関連製品が2030年には売上高構成比が50%、2050年には80%を占めるように事業転換を図る。

日本ガイシは、自動車排ガス浄化用等各種産業用セラミック製品を製造しており、自動車の排ガスを浄化する触媒担体ハニセラムやDPF(ディーゼル・バティキュレート・フィルター)などを提供する。内燃機関向けの売上高が約60%を占める。

同社は世界中で進むEV化の流れに対し、内燃機関向けの需要がゼロとなるシナリオを描いた。エンバイロメント(EN)事業(自動車排ガス浄化用製品事業)を収益基盤として、CNとDSを成長分野とする事業構成を転換する戦略に変革中だ。

「日本ガイシ統合報告書2025」のトップメッセージの中で、小林茂社長は「自動車産業では、EV化など100年に一度の大変革期を迎えています。変わり続ける市場を先んじて捉え、セラミック技術を核に、新たな価値創出に挑戦します」。

「世界の不確実性が増し、市場ニーズが絶え間なく変化する時代。独自のセラミック技術で培った強みを更に磨きながら、事業構成を転換し、自ら変革に挑みます」

「カーボンニュートラル( CN)とデジタル社会(DS)の領域における成長機会を捉え、未来の社会課題を解決する新たな価値の提供を通し、持続的成長を遂げていきます。これらの関連製品が2030年には日本ガイシ売上の50%、2050年には80%を占めるように事業転換していきます」と断言しています。

上記の企業価値向上に向けた重点施策の一つが「人的資本経営」だ。日本ガイシは、「諦めずに何度も挑戦する粘り強く挑戦する人材が、顧客ニーズ、NGKグループだけが作れる製品、差異化技術にこだわり、NGKグループの未来を創り出す」と考える。

2025年4月、基幹職新人事制度が導入され、NGKグループの従業員一人ひとりが自ら考え行動し、変革を起こす人材の育成加速を狙う。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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