記事のポイント
- 世界経済フォーラムの年次総会(通称:ダボス会議)が19日から始まる
- 独シンクタンクの調査によると、近年プライベートジェット機での参加は急増した
- 多排出の交通手段を多用して地球課題を議論するのは「偽善」と国際NGOらの声
「ダボス会議」として知られる世界経済フォーラムの年次総会が19日からスイス・ダボスで始まる。独シンクタンクがダボス会議前後での周辺交通量を調査した報告書によると、プライベートジェット機がダボス周辺空港を離発着する回数は700フライトを超え、過去3年で3倍に急増した。会議参加者の4人に1人がプライベートジェット機を利用したことに相当するという。国際NGOは、CO2排出量が多いプライベートジェット機を多用しながら、地球規模の課題を議論するのは超富裕層の「偽善」だと非難する。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

(c) World Economic Forum Thibaut Bouvier
独シンクタンクのT3トランスポーテーション・シンクタンクは今月15日、「空のダボス」と題する報告書を公開した。同報告書は、過去3年間のダボス会議の開催時に、その前後でダボス周辺の7空港を離発着したプライベートジェット機などの交通量を分析したものだ。
それによると、2025年にはダボス近郊の空港で、プライベートジェット機による離発着が普段より709フライト多く確認された。これは、ダボス会議の参加者の4人に1人がプライベートジェット機を利用するのに相当するという。
ダボス会議の全体的な参加者数は、ほぼ横ばいで推移しているのに対し、プライベートジェット機の離発着は、2023年は普段より227フライト多かったのに対し、2024年は628フライト、2025年は709フライトと、3年前から3倍超に増えた。参加者が増えているのではなく、離発着を繰り返していることによるという。
■ダボス会議が映す「気候不平等」
国際NGOのグリーンピース中東欧支部は、プライベートジェット機が実際に飛行したルートの約7割は、列車で1日以内に移動可能な距離だと試算する。グリーンピースによると、プライベートジェット機での乗客1人当たりの温室効果ガス排出量は、通常の航空便の約10倍、鉄道での移動に比べて約50倍だという。
「世界で富と権力を最も有するエリート層が、ダボスで地球規模の課題や進歩を議論しながらプライベートジェット機の排出するガスで文字通り地球を燃やしているのは、まったくの偽善だ」と、グリーンピース・オーストリアのヘルヴィグ・シュスター欧州キャンペーン担当者は断じた。
貧困の撲滅を掲げる国際NGOのオックスファムが昨年公開した報告書によると、世界の富裕層上位0.1%が1日に排出するCO2は、最貧困層の上位50%の1年分を上回る。
参考記事:超富裕層上位0.1%の1日の排出量は最貧困層50%の1年分以上
オックスファムによると、すでに富裕層上位1%は、世界の全人口に公平に分配した2026年のカーボンバジェット(炭素予算)を1月10日に使い切り、富裕層上位0.1%に至っては1月3日に使い切ったという。カーボンバジェットとは、地球温暖化を産業革命前から1.5℃以内の上昇に抑えるために排出が許されるCO2排出量だ。
オックスファムは、「世界の排出量が毎年増え続ける中で、残りの炭素予算そのものが少なくなっており、富裕層上位1%が炭素予算を使い切る速度は、以前よりも加速している」とオルタナの取材に答えた。
オックスファムによると、プライベートジェットや豪華クルーザー、広大な邸宅でのエネルギー消費など、超富裕層による炭素排出量の多いライフスタイルが、世界が気候災害を回避するために使えるカーボンバジェットを浪費しており、世界の富裕層上位1%が1年間に排出する温室効果ガスだけで、今世紀末までに、推定130万人の熱中症関連死を引き起こすという。
そして、人為的なCO2排出がもたらす気候変動で最も深刻な影響を被るのが、最もその責任が少ない貧困国や脆弱な地域コミュニティだ。
今年のダボス会議は、ドナルド・トランプ米大統領を含め、政界や経済界から約 3000 人の参加を見込む。グリーンピースのレナ・ドナート広報担当官は、「多くの超富裕層は、自らの生活様式が、生態系の破壊という痕跡を残している事実に全く関心がないようだ」とコメントした。



