国際環境NGOのグリーンピース・ジャパンは先月、レポート「遺伝子組み換え 失敗の20年」を発表した。「世界の食料需要をまかなう」「気候変動に耐えられる」「農薬使用が減る」など、GM(遺伝子組み換え)作物をめぐるキャッチフレーズを7項目に分類して検証。いずれも「神話」であり、現実には「崩壊した工業型農業に勢いをつけただけだ」と指摘している。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■GM企業の主張を反証
レポートは2015年11月にグリーンピース・ドイツが発表したものの邦訳版。GM作物は、遺伝子の一部を人為的に組み換えることで除草剤や害虫への耐性を獲得した。生産者のメリットとして、栽培コストの減少や収量の増加などが期待できる、と開発企業は主張する。
またGM作物は、遺伝子組み換え技術が特許で保護されている。そのため生産者は自家採種が禁じられ、種子や農薬を毎年買うことになる。こうして開発企業には安定的な収益が約束される、というしくみだ。開発企業の多くは農薬メーカーでもある。
主なGM作物はダイズ・トウモロコシ・ワタの3種類で、ダイズは世界の全栽培面積の半分、トウモロコシは同3割に上る。インドでのGMワタの栽培面積は実に9割を占める。
一方、食用GM作物の主要栽培国は北米と南米に集中。また、GMの他の作物への普及は限定的だ。レポートは、世界の農地に占めるGM作物の栽培面積は3%にとどまると指摘。
さらにレポートは「収量増を目的として開発された遺伝子組み換え作物は存在しない」と主張。その理由として「収量が増えるのは、もともと収量の多い高品質の品種に後から遺伝子組み換え形質が追加されたため」「害虫の減少で収量が増えるのは一時的。耐性を持った『スーパー害虫』の出現で効果は長続きしない」などと説明する。