「組織に人が増えれば問題は解決するのか」

■人が増えれば問題は解決するのか

NPOが抱える課題に多いのが、慢性的な人手不足だ。常勤職員、非常勤職員、学生インターン、ボランティアなど、勤務形態がばらばらなことも多い。カイケツに参加するNPOからも「いつも忙しい」「スタッフが疲弊している」といった声が多く挙がる。

だが、中野昭男講師(のぞみ経営研究所所長)は、「人が増えたら本当に問題が解決するのだろうか」と投げかける。「増員した人材が活躍できる組織になっているのか」「人が足りないことで、具体的にどのような問題が起きているのか」、深く掘り下げることが重要だとした。

左から豊島巡回診療所の看護師小澤詠子さんと豊島ナオミ荘施設長の丹生裕一朗さん

瀬戸内海東部にある豊島(てしま)から参加するのは、豊島ナオミ荘施設長の丹生裕一朗さんと豊島巡回診療所の看護師小澤詠子さんだ。少子高齢化が進むなか、住み慣れた地域で最後まで暮らせる環境を維持し、望まない島外流出を防ぐための活動を続けている。

豊島ナオミ荘は島唯一の特別養護老人ホームで、現在30人が入所している。抱えている課題として「厨房の人員不足」「管理事務局の残業」「情報伝達不足による配膳ミス」「宅配弁当導入による食費の増加」などを挙げた。

これに対し、中野講師は「『厨房の人員不足』は『結果』ではなく『原因』」と説明する。人材不足によって、結果的にどんな問題が起きているのか、原因と結果を整理して考えることが大切だとアドバイスした。次回以降で、ありたい姿に対し、現状はどのような状態にあるのかを探っていく。

施設長の丹生さんは「これからも住民から必要とされる場所であり続けたいし、使命感を持って価値を提供できる介護施設を運営していきたい」と力を込めた。

■組織内の「対話」が重要

トヨタ財団は2016年、社会課題解決の担い手であるNPOに問題解決力を身に付けてもらうことを目的に「カイケツ」を開始した。

カイケツはグループワークが中心で、参加者同士が情報交換したり、悩みを共有したりできるのも特徴だ。議論した内容を組織内に持ち帰ってもらい、問題解決を実践するための「対話」を重要視している。

次回(第3回)のカイケツは6月13日に開催される。問題を解決するための2つめのステップ「現状把握」を行う。

<トヨタ自動車の「問題解決」の8ステップ>

1.テーマ選定:
解決すべき対象を決める。問題の重要性、問題が拡大傾向にあるか、問題の影響の大きさなど様々な観点から何を解決すべきか判断する。経営者の重要な役割。

2.現状把握:
現状の姿を客観的かつ定量的に認識すること。事実・データに基づいて伝えることがポイント。

3.目標設定:
何を、いつまでに、どのようにするのかを具体的に決める。マイルストーンを置いて、取り組みの経過を可視化する。

4.要因解析:
なぜを繰り返して、真因を探る。なぜを繰り返すことで、具体的な実施事項が出てくるので、論理的、合理的な解決策が期待できる。

5.対策立案:
対策内容を整理して、実行計画を立てる。5W1Hを明確にして、最も効果的と思われる対策案から手掛けていく。

6.対策実行:
計画通りにやりきることが大切。

7.効果確認:
対策内容への評価を行う。「対策をほとんど実施し、期待通りの成果が出た」「対策はほとんど実施したが、成果は得られなかった」、「対策はほとんど実施しなかったが、期待通りの成果が得られた」、「対策はほとんど実施せず、成果も得られなかった」の4つのパターンが考えられる。

8.標準化と管理の定着:
効果が出た対策の内容を標準化して、その後の取り組みに反映させていく。こうすることで、同じ問題の再発を防いでいく。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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