kemioさん、長谷川ミラさんに聞く「セルフラブ」

イギリス生まれの自然派化粧品ブランドのザボディショップ(東京・中央)はこのほど、セルフラブ(自己肯定感)を高めるキャンペーンを世界70カ国以上で始めた。同社が発表した調査では、世界の女性の2人に1人がセルフラブよりもセルフダウト(自己否定感)を抱いていることが明らかになった。同キャンペーンのアンバサダーを務める動画クリエイターのkemioさんと環境問題を発信する長谷川ミラさんに「セルフラブ」について聞いた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

ボディショップがブランド創立45周年を記念して発売した「ボディバター」は、セルフラブを高めるようなポジティブなパッケージ。ブリティッシュローズやピンクグレープフルーツ、シア、アーモンドミルク&ハニー、マンゴーなど全9種類

世界70カ国以上で展開するザボディショップではブランド創立45周年を迎え3月25日から、「ほどこう、自分をしばるものを。#YesToSelfLove」と題したグローバルキャンペーンを始めた。公式サイトやアプリでセルフラブの情報を発信し、自分自身を否定してしまう要因や解決方法を知り、認めて発信し、セルフラブを高める行動を1年間で100万個集めることを目指す。

同社は、英国人のアニータ・ロディックが1976年に英・ブライトンで創業した。「ビジネスには世界をよくする力がある」というソーシャルなミッションを掲げ、1987年から独自のフェアトレードプログラムを導入している。

同プログラムでは、優れた自然原料を持つ生産者やコミュニティから適正価格で調達するだけでなく、同時に地域コミュニティの発展や環境保護活動も行う。このような独自の取り組みは、美容業界では前例がなく、規模も最大を誇る。

創業時から自尊心を高める啓発活動に積極的に取り組んできた。1997年に発表したセルフエスティームのキャンペーンにおける「世界の30億人のうちスーパーモデルのような外見は8人だけ」というコピーは世界で話題になった。

ダイバーシティは年々発展しているが、一方でSNSによる誹謗中傷などが起きて、今なお自己肯定感にまつわる問題は根強く残っている。そこで、同社ではブランド創立45周年を迎えた今年、同キャンペーンを発表した。

昨年11月~12月に世界21カ国2万2619人を対象に行ったセルフラブに関する調査では、女性が自信を持てない理由のトップ3は「経済的な状況」(32%)、「人生の目標を達成していない」(25%)、「容姿」(23%)だった。特に、Z世代といわれる1996年以降に生まれた若者がセルフラブに葛藤を感じていることが分かった。日本は国別で見ても、セルフラブが高くなかった。

同キャンペーンのアンバサダーを務める動画クリエイターのkemioさんと環境問題を発信する長谷川ミラさんに、セルフラブの高め方やSNSとの付き合い方、サステナビリティへの考えなどを聞いた。

■kemioさん、「自分自身に目を向けて」

――セルフラブを高めるために意識していることはありますか。

もともと気にし過ぎてしまう性格なので、ちょっとしたコメントでも気になってしまいます。そういう時には、セレブリティのインタビュー映像などを見て気分を紛らわすこともあるのですが、一番効果があると思っているのは、一人になる時間をつくることです。

どこかに旅行したりするような大掛かりなことではなく、例えば、ゆっくりお風呂に浸かったり、携帯から離れたりすることも「一人になる時間」です。

エゴサーチはしないようにしているのですが、YouTubeに動画をアップした後は、反応が気になってしまい調べることもあります。こういう風に見られているんだ、こうすれば気に入ってもらえるんだと、コメントを見ながら考えるようになるのですが、気付いたら、その声に縛られた自分になっていました。

人は誰しもが、みんなから好かれたいと思うものですが、自己を持たずに「誰かが求めるkemio」を追求してしまうと、疲れてしまいます。SNSや生きているとついつい外側を見るようになりますが、それも大切なのですが、内側にいる自分自身を見ることを忘れたくないですね。こんなすごいところがあったんだと気付くはずです。

――セルフラブを高めるためには、SNSとの付き合い方も重要です。kemioさんにとってSNSとはどのようなものでしょうか。

自己表現やみんなとつながれるツールだと思います。もちろん楽しい一面だけでなく、誹謗中傷が拡散されやすいという面もあります。SNSを使う人が増えたことで、特に今の若い世代には「休憩」がなくなったと感じています。

学校や会社から帰ってきても、自分の携帯にメッセージが飛んできたりして、休みの時間は意識して作らないと持てないカオスな社会です。だから、何時以降はメッセージを返さないなど自分のルールを設けることも大事だと思います。

長谷川ミラさん、「素直でいれる友人見つけて」

――ジェンダーやサステナビリティについて発信していますが、日本では「意識高い系」などと揶揄されてしまう傾向があります。

私もそう言われることはあります。だからサステナビリティについて発信するときは、私の思想ではなく、現実で起きている事実として伝えるようにしています。今起きているその課題を知って、向き合ってほしいからです。

まだ数は多くないですが、日本でも社会問題について言及する芸能人が増えてきました。もっと広がっていけば、一般の人でも気軽に話せるようになると思います。そういうことを話すことや、環境に意識した服や化粧品などを使うことが、おしゃれだと思うようにもなると思います。

私が発信することで、「長谷川ミラが言っていたから(社会問題に関心を持った)」というように誰かの「言い訳」になりたいです。

――セルフラブを高めるために意識した取り組みはありますか。

もともとポジティブな性格なのですが、振り返ると、高校生の時の出来事が大きいかなと思います。当時は、広く浅く友達をつくっていたのですが、15歳くらいから、狭めました。素の自分を出せる友人を持ちたかったからです。

当時は周りの大人たちの言うことに反発し、斜に構えた性格だったのですが、このままではいけないと思って、親友に「これからは自分に素直になる。何でもあなたに話す。だから受け止めてほしい」と話しました。

素の自分を受け止めてくれる人が一人いるだけで心強くなるし、そうした友人に囲まれると自分もポジティブになります。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナS編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナS編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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