(この記事はサラヤ株式会社 「感染症と予防Web」感染症専門家コラム「第40回:日本国内でデング熱が発生した!」からの転載記事になります。)
2014年の年明けは感染症関係の衝撃的なニュースが相次いだ。
中国では広東省などで鳥インフルエンザH7N9型の患者が多発しており、流行が拡大する様相を見せている。また、暫く鳴りを潜めていたH5N1型の患者がカナダで発生し、死亡するというニュースもあった。さらに、国内では浜松市の小学校でノロウイルスの集団感染がおこり、1000人近い患者が発生した。
こうした感染症関係のニュースの中でも筆者がとくに注目したのは、ドイツ人女性が日本訪問後にデング熱を発病したというニュースである。この女性は昨年8月に日本各地(長野、山梨、広島、京都、東京)を旅行し、帰国後間もなく発熱をおこした。ベルリンの病院で検査を受けたところ、デング熱に感染していることが判明したのである。この女性が訪問した国は日本だけであり、日本でデング熱に感染したことは明らかだった。
デング熱は蚊に媒介されるウイルス感染症で、近年は東南アジアやカリブ海諸国で大流行がおこっている。日本では60年以上前に大阪や長崎で患者の発生があったが、それ以降は国内から完全に根絶されていた。
しかし、ここ数年、東南アジアなどからの輸入症例が増加しており、昨年は年間249人の患者が確認されている。こうした状況を憂慮し、筆者は本コラムの第4回で「デング熱が日本国内で発生する日も近い」という警鐘を鳴らした。それが現実のものになってしまったのである。