公民館や図書館、公園などの公共施設は行政が運営するのが普通だ。ところが国や自治体に財政の余裕はなく、施設は老朽化。硬直した運営でサービスの質が低いこともある。そうした昨今、企業も参加して公共空間を運営する取り組みが各地で始まっている。『PUBLIC DESIGN 新しい公共空間のつくりかた』(馬場正尊+OpenA編著、学芸出版社刊、税込1890円)は、公共空間を民間に開放する試みを取材した本だ。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■公共空間を民間資本で活性化
著者の馬場氏は「改装OK」「古民家」「倉庫」など、個性的な魅力を持った不動産物件を紹介するウェブサイト「東京R不動産」を2003年に立ち上げたことで知られる。2015年春、新たにその公共空間版である「公共R不動産」を発足させた。可能性を持ちながら様々な事情で「塩漬け」状態の公共空間を発掘し、民間にも運営の門戸を開くのが目的だ。
国全体で1千兆円もの借金を抱え、しかも将来、人口と税収は縮小する。税金でハコをつくり、行政が維持するという従来の公共空間の運営方法がほころび始めている。本書で紹介するのは、企画・建設・運営と、全てを行政が担っていた従来の公共空間のあり方から踏み出す試みだ。
そこでは社会の多様なニーズを踏まえ、企画の段階から企業をはじめ民間が参加する。早い話が、民間資本を導入して公共空間を作り直すのである。ヒト・モノ・カネは限られているが、誰にどのようなサービスを提供するのかをはっきりさせることで効率的な運営を実現。しかも受益者の負担も明らかとなる。一般的な「指定管理者制度」のように、単に民間が行政から公共施設の運営を受託するのではない点が特色だ。