記事のポイント
- 再エネ切り替えなど脱炭素化に取り組むスキー場が全国に広がっている
- 2023年に16スキー場から始まった取り組みが、46スキー場に拡大した
- 背景には、気候変動によって起きる「雪不足」への危機感がある
再生可能エネルギーへの切り替えなど脱炭素化に取り組むスキー場が全国に広がっている。2023年に6都道府県の16スキー場から始まった取り組みだが、2025年には11都道府県46スキー場に拡大した。背景には、気候変動によって起きる「雪不足」への危機感がある。(オルタナ編集部=川原莉奈)

気候変動の影響によって、今後は雪不足の深刻化が予測されている。こうしたなか、スキー場では事業の持続可能性を追求するため、脱炭素化に取り組む動きが広がる。
スキー場の脱炭素化の動きを支援するのは、一般社団法人Protect Our Winters Japan(プロテクト・アワー・ウィンターズ・ジャパン、以下POW JAPAN)だ。同団体を立ち上げたのは、米国のプロスノーボーダーのジェレミー・ジョーンズ氏だ。
気候変動が雪山に与える影響に危機感を抱いたジョーンズ氏らスノーボーダーが集まり、2007年に米国で立ち上げた。現在は日本を含む世界16カ国で活動を展開する。
日本の団体(POW JAPAN)は2019年に、スノーボーダーの小松吾郎氏が中心になって立ち上げた。自然を愛する日本のスキーヤーやスノーボーダーたちと「気候変動から冬を守る」を合言葉に活動を行う。
POW JAPANは2023年からスキー場の脱炭素化を後押しするため、「サステナブル・リゾート・アライアンス(SRA)」というネットワーク活動に取り組む。SRAに加盟したスキー場は、スキーヤー・スノーボーダーと協力して、グリーンなスキー場の実現を目指す。
具体的には、森林や生態系の保全、フードロス削減といった食の見直し、地域と連携した環境教育などだ。マイボトル推奨や生ごみ処理など、日常レベルでのごみ削減に向けた取り組みも広がりを見せている。
2024-25シーズンからは、寄付付きリフト券「POWチケット」が導入された。滑り手の「冬を守る」という思いを行動へと変える仕組みだ。寄付金は全額、再エネ導入など各スキー場の環境施策に活用され、使用用途と成果はすべて公開されている。
サステナブル化を進めるスキー場のネットワーク「サステナブル・リゾート・アライアンス(SRA)」は、2023年の発足から3シーズン目を迎え、加盟スキー場は全国46カ所にまで拡大した。
スキー場のCO2排出の多くは、リフトやゴンドラの運行、施設運営に用いられる電力に由来する。そのため、再エネ導入は脱炭素化に向けて最も効果の大きい取り組みの一つとされる。現在、7スキー場で、施設で使用するすべての電力を再エネ100%に切り替えている。
SRAの動きは、スキー場や滑り手、地域が協働して気候変動に向き合うムーブメントとなっており、今後の展開に期待が高まる。



