児童文学にもデモをテーマに織り込んだ作品が登場した。『空はなに色』(著者・濱野京子、絵・小塚類子 そうえん社刊、税込1404円)は、小学生の女の子がひょんなことから国会前の脱原発デモに足を運ぶ様子が描かれている。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■10代にも政治が身近に
主人公は東京・神田に住む小学5年生の女の子。生まじめだがどこにでもいる小学生だ。夏休みの終わり頃、いとこの少女が家に遊びにやってくる。3才年上のいとこは金髪で派手な服を身に着け、夏休みだからと化粧までしている。
そんな対極のような2人が銀座へ遊びに行った帰り、ドラムのリズム音がする方へ足を向ける。そこは国会前で、脱原発デモの真っただ中。老若男女が「再稼働反対」と声を上げていた・・・という筋書きだ。
「やっぱ原発事故とかやじゃん。日本ってさ、地震多いし」と、いとこは言う。無論2人とも、とりわけ主人公は、原発に対する固まった考えがあるわけではない。作品はあくまで「夏の思い出」を経た子どもの成長物語の枠組みに収まっている。
一方、主人公らがデモをきっかけに、原発問題という社会の「リアル」に触れるプロセスもまた、作品の重要なテーマだ。それは、子どもが市民や国民、つまりは「主権者」としての自分を意識する過程として描かれているだろう。
今年6月、選挙権年齢が18才に引き下げられる。21日、10代が中心の安保法制反対運動「ティーンズソウル」が都内で呼びかけたデモには、高校生や社会人に混じって中学生の姿もあった。その中の一人は「自分も選挙できる年齢に近づいている。政治に興味を持ちたい」と話した。
自由に考え、発言し、政治参加する「市民的自由」は民主主義の基礎だ。そのことに10代も気付き始めた。ひるがえって大人はどうだろう。勤労と納税の義務は果たした、あとは他人任せ、という「消費者民主主義」に甘んじてはいないか。