「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録され注目が集まるなか、和食文化の歴史を紐解くドキュメンタリー映画「千年の一滴 だし しょうゆ」(柴田昌平監督)が1月2日、公開された。和食の素材を生産する人々の姿を追うと同時に、科学的な視点で「アスペルギルス=オリゼ」という日本独特の麹カビが、和食の基礎「うまみ」だと解明している。NHKは映画のベースとなった映像を2013年12月に放送。ATP(全日本テレビ番組製作社連盟)は「海外に発信できる作品」と高く評価し、総務大臣賞を授与した。(松島香織)
「千年の一滴 だし しょうゆ」は、「だし:大自然のエッセンス」、「しょうゆ:ミクロの世界との対話」の2部構成だ。フランスの制作会社と共同し、ハイスピード撮影で美しい映像構成に努めた。ヨーロッパの放送局ARTEは2014年夏に放送し、6回再放送する好評を得た。
柴田監督は「実は和食は危機的な状態にある」と危惧している。洋食をはじめ、濃い味付けの料理を幼い頃から食べていると、和食の繊細な味覚は育たなくなるという。
生産者の感覚が鈍れば、それまで続いて来た味を伝えることはできない。そのうえ消費者が「うまみ」に魅力を感じなければ和食は廃れていく。
映画の中で、生後6カ月の男の子がだしを使った離乳食を口にする。その途端に見せる無邪気な笑顔が、ひとつの明るい希望となっている。
2015年1月2日からポレポレ東中野(東京)で上映が始まった。英語ナレーション(日本語字幕つき)版を毎週土曜日の15時の回に上映する。大阪、新潟など順次全国公開予定。