[書評:ドイツ脱原発倫理委員会報告]脱原発を決定づけた独の倫理委員会、エネルギーシフトへの道筋とは

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本書を手にするミランダ・シュラーズ教授

本書を手にするミランダ・シュラーズ教授

ドイツは2011年の福島第一原発の事故をきっかけに、早期の脱原発を決定した。その決定に大きな影響を及ぼしたのが、メルケル首相が設置した倫理委員会である。倫理がエネルギーにどういう関係があるのか。本書『ドイツ脱原発倫理委員会報告』(大月書店)は、委員会の報告書全文の邦訳に解説をつけたもので、日本での原発議論に参考になる一冊だ。(独ハノーバー=田口理穂)

政策決定に、なぜ倫理委員会は必要だったのだろうか。委員会のメンバーのひとりであり、本著の編訳を担当したベルリン自由大学のミランダ・シュラーズ教授は「エネルギーは技術だけの問題ではない。日本の人にも倫理委員会が議論した内容を知ってほしい」と話す。

委員会の17人のメンバーには、原子力の専門家はおらず、宗教や哲学、経済、社会学者、化学メーカーなどさまざまな分野の人で構成された。議員はいたが、緑の党や環境保護団体の関係者はおらず、極端な賛成や反対派を排除した顔ぶれだった。

倫理委員会は福島の原発事故直後に招集され、活動期間は2011年4月4日から5月28日と2カ月足らず。その間「福島の事故はドイツにとってどういう意味があるのか」、「原発を持つ社会のあり方」について徹底的に考えた。

ドイツのエネルギーの将来の展望をはじめ、エネルギーシフトや、核拡散や放射性廃棄物の処分についても提言した。人間として、原子力技術を持つ意味を問いかけている。これは社会全体が考えるべきことで、一部の技術者や政治家が決めることではない。

原発は本当に必要なのか――。そのリスクの責任を考えたとき、原子力事故は最悪の場合どんな結果になるかは未知であり「損害が発生する可能性を排除するためには、原子力技術をもはや使用すべきではない」(49頁)という結果が導かれた。

倫理委員会がまとめた「提言」に法的権限はないが、メルケル首相の脱原発決定に大きな影響を与えた。

本書は福島事故をきっかけに、ドイツがエネルギーだけでなく、将来の社会のあり方全般について考えた提言がまとめられている。シュラーズ教授は「これまであったものを守ろうとするのは、将来モデルではない」と話し、本書で「リスクのもっと小さな代替手段がある以上、脱原発は可能」(21頁)と結んでいる。

福島原発事故から4年が過ぎて将来を考えたとき、ぜひ読みたい一冊である。

◆『ドイツ脱原発倫理委員会報告 社会共同によるエネルギーシフトの道すじ』(大月書店)
http://www.otsukishoten.co.jp/book/b110062.html

2015年4月10日(金)15:27

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