編集長コラム) CEOが輪番で半年ごとに変わる会社

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1)については2011年、3人の取締役副会長がCEOとなる輪番制を導入した。その理由は「変化が早いICT業界で、一人の経営者に依存すると経営が硬直化し、予想外のリスクが起きたときには対応できなくなるため」だそうだ。

この発想は「V字飛行する渡り鳥の群れでは常に先頭を飛ぶ鳥が入れ替わりながら、脱落者を最低限に抑えつつ危険な長旅を続けることからヒントを得た」という(同社広報)。

2)の従業員持株制度は、「社員には『仮想株』と呼ばれる一種の受益権であり、議決権はなく、自由な売買ができない」(東洋経済新報社『最強の未公開企業ファーウェイ--冬は必ずやってくる』 、田涛、呉春波著)というものの、業績に応じた配当が受けられる。

転職が激しいICT業界において、「ゴールデン・ハンドカフス」(金の手錠)と呼ばれる社員の引き留め策という側面もあるが、それにしても、社員持ち株会が全株式の98%超を保有する制度は他に類を見ないだろう。

3)の本社風景(深セン市郊外)も、訪れる者を驚かせる。筆者はネスレ(スイス)、BMW(ドイツ)、フォード、アムジェン、ナイキ(米国)などの本社を取材で訪れたことがあるが、どの会社にも当てはまらない雰囲気だった。しいて言うと、ナイキのキャンパスに近い。

東京ドーム42個分、約200ヘクタールの本社は緑に囲まれ、湖もあり、11のブロックで4万人が働く。敷地内には病院やスーパー、スポーツジムのほか3000室の社員寮があり、社員の子どもたちが緑の中で遊んでいるのだ。

社員寮といっても長く住めるわけではない。「ファーウェイの本社は中国全土や世界から社員が働きに来るので、彼らが自分たちの住宅を見つけられるまで、社宅を使ってもらう仕組み」(同社広報)だ。だとしても、着任早々、家族と離れて暮らすのではなく、会社の敷地で子どもたちを遊ばせておけるという制度は社員にとってあり難いことだろう。

この3点は、あくまでファーウェイの一側面であり、これで全てを語ったというには程遠い。だが、かくもユニークな企業文化が、創業(1987年)以来30年足らずで同社を5・5兆円企業にまで成長させたことは興味深い。

中国企業に対しても、「驚異、揶揄、疑念」といった単一的な見方を変えないと、日本は人口やGDPという「量」だけでなく、「質」でも追い越されかねないように感じた。(オルタナ編集長 森 摂)

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2015年9月1日(火)1:57

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