[書評]電力自由化で誰もが電気の「当事者」に

このエントリーをはてなブックマークに追加

4月に始まる電力小売の全面自由化で、社会にどんな変化が生まれるのか。そもそも電力自由化とは何なのか。『かんたん解説!!1時間で分かる電力自由化入門』(江田健二著、インプレスR&D刊、1296円)は、一見複雑にも見える電力自由化のしくみをわかりやすく説き起こした入門書だ。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

■自由化の長所と短所を紹介

『かんたん解説!! 1時間でわかる 電力自由化入門』表紙

『かんたん解説!! 1時間でわかる 電力自由化入門』表紙

電力小売の自由化は1995年から段階的に実施されてきた。従来は企業や工場、集合住宅といった大規模需要家が対象だったが、4月以降は一般家庭などでも電力会社を選べるようになる。

著者は、従来続いてきた大手電力10社による地域独占体制が、日本の戦後復興と経済成長を支える上で非常に有効だったとする。地域独占により電力インフラが整備され、電気の安定供給により産業が発展できた、というわけだ。

ではなぜ今、全面自由化なのか。従来の大規模集中型電力に加えて、自然エネルギーに代表される小規模分散型エネルギーが台頭してきたこと。そして電力とIT技術の融合により、電力消費の最適化が可能となりつつあること。これらの変化により、地域独占のメリットが相対的に減少しているためだ、と著者は指摘する。

全面自由化で到来するのは、発電方法も含めて「電気を選べる」社会だ。早くも多様な料金プランが登場している。また「スマートメーター」や「HEMS」といった機器の普及により電力消費の「見える化」が実現。家庭でも無理なく「賢い節電」ができるとされる。

さらにスマートメーターが収集した電力消費データをビッグデータとして活用することで、新たなサービスやビジネスチャンスも生まれる、と本書は予測。他方、電力会社や料金プランの乱立で消費者が混乱したり、価格競争に陥った電力会社が設備投資を手控えたりする恐れがある、などとも指摘している。

国や電力会社に「お任せ」でも機能した従来の電力システム。今後は企業や消費者も当事者となって、電力に責任を負う時代が来る。電力自由化で暮らしがより便利になる反面、社会全体で電気をめぐる新たなルールをどう作るかが問われている。

2016年3月18日(金)11:30

alternaショップ
ページの先頭に戻る↑