21世紀の日本は、すでに「沈黙の春」の世界

石井 吉徳
東大名誉教授/もったいない学会名誉会長/元国立環境研究所長(第9代)
このエントリーをはてなブックマークに追加

石井吉徳 東大名誉教授/もったいない学会名誉会長/元国立環境研究所長(第9代)

平成28年6月22日

地球は有限である

人類は無限の経済成長はできない。人口はすでに70億を超え、今も増え続ける。現代工業社会は大量生産の仕組み作ったモノは、いずれゴミとなる。 そして廃棄物は増えるばかり、環境破壊は進行する。が、現代人は指数関数的な成長を当り前と思うようである。

その頂点がアメリカで、彼の国の浪費は世界からの借金で賄われる。日本のお金も大量に。この国は大変な市場主義だが、これがアメリカンスタンダード、グローバリゼーションと称される。

これはマネー原理主義なのであり、それは世界に貧富の格差を作りつつある。 富は一部の人々に集まる仕組み、これが権力利権構造、今では1%の裕福層に富が集中する仕組み、下位99%、特に若者に負の経済がしわ寄せされる。

これが世界に蔓延する紛争の原因、世界の基本構造が変ったのである。見方を変えれば、地球が有限だから、我々は地球の限界に当面しているともいえる。だが楽観論者は科学技術が進歩すれば、市場に任せればと言う。本当にそうだろうか、そうではなかろう。

そこで改めて人類の歴史、文明史を見てみよう。

古代から「森を失った文明」は滅んできた。ところが人類は過去の歴史から学ぶに疎いのである。このようにして、昔から今も人類は森を破壊、環境を汚染してきたのである。

写真は、世界遺産に指定され、辛うじて生き残ったレバノン杉、数千年の遺影である。深い杉に覆われていたレバノンだが、今はこのような林が所々に残るだけとなった。

3000 年の歴史を誇るエジプト文明、そのピラミッドの傍には死んだ王があの世に上る船が今でも残っている。エジプトに行けば分かるが、ここは砂漠の国、大きな木は無い、もちろん森はないのである。そこで古代からレバノン杉が運び込まれた。つまりレバノンは木材の輸出大国だった。その名残がこの写真なのだ。

レバノン杉(1996年、撮影・川村徒最子さん)

レバノン杉(1996年、撮影・川村徒最子さん)

このような自然破壊が世界中で起こった。今では世界の森は半減、自然生態系は徹底的に破壊されたのである。これが文明の発展と崩壊の姿である。

 

ページ: 1 2 3 4

石井 吉徳
東大名誉教授/もったいない学会名誉会長/元国立環境研究所長(第9代)
東京大学理学部物理学科・地球物理学卒。東京大学名誉教授であり、「もったいない学会」名誉会長。元国立環境研究所長でもある。専門は地球学、エネルギーと資源の科学など。単著書には『石油最終争奪戦ー世界を震撼させる「ピークオイル」の真実』(2006)、『石油ピークが来た―崩壊を回避する「日本のプランB』(2007)、『石油ピークで食糧危機が訪れる』(2009=いずれも日刊工業新聞社)がある。

2016年6月22日(水)13:06

alternaショップ
ページの先頭に戻る↑