岩手発「ヒトとモノの新たな潮流による地方創生」

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9月4日、東京都千代田区の全国都市会館で、いわて三陸復興のかけ橋プロジェクトによる、「第5回岩手かけ橋共創ネットワーク会議」(2017年度第1回)が開催されました。東日本大震災から6年半が経過し、首都圏においては被災地の報道などは減少していますが、会議には、復興支援事業を行っている首都圏などの企業33社と、岩手県関係者など計約70人が出席し、岩手県内での支援事例の紹介や今後の支援の方向性についての意見交換を行いました。(一般社団法人RCF=荒井美穂子)

首都圏だけでなく東北、関西からも企業が参加

■ヒトとモノの新たな潮流による地方創生

震災から6年半が経過し、これまで復興支援に継続して関わってきた企業においても、今後の支援については転換点と捉え、活動に区切りをつける企業も少なくありません。また、継続を打ち出している企業においても、復興への取り組みに民間が関わる意義や本業への効果の明確化が求められています。 

一方、被災地域においては、かさ上げ工事などが完了し、いよいよ「まちづくり」や「産業づくり」が本格化してきたタイミングです。ここからがソフト面の復興の本番ととらえ、本業につながる関係を地域とあらためて築きたいと考える企業も出てきています。

地域にとっては、震災によって加速した人口減少から、どのように住民の回帰を促すか、震災後の復興支援などでできた外部からの人の流れを、今後どうやって、より定常的な交流につなげ、地域を盛り上げる力とできるかは、まさに地域の復興の成否を握る課題となっています。そのような背景を踏まえ、今回の会議は、「ヒトとモノの新たな潮流による地方創生」のテーマで開催されました。

■「復興の総仕上げ」を「未来への資産」へ

第一部では、県復興局による岩手県沿岸部における復興の進捗状況説明、三陸DMOセンターから三陸復興道路をはじめとする交通インフラの整備にあわせた観光集客の仕組みづくりについて、県文化スポーツ部から2019年に開催予定のラグビーワールドカップ2019に向けた地域の取り組みについての発表が行われ、引き続き、発表した3者によるパネルディスカッションが行われました。

パネルディスカッションでは、発表内容をふまえて、1.2019年に開催が予定されている「ラグビーワールドカップ2019」と「三陸復興防災博(仮称)」の岩手開催の意味、2.震災から10年目にあたり、東京オリンピック・パラリンピック開催予定である2020年その先に三陸地域が目指す姿、3.未来の実現に向けた企業への期待について意見交換が行われました。

2019年に向けた行政主体のインフラやハード面の整備が進む中、それらを住民主体の継続した活動につなげ、真の「未来への資産」としていくためにはどのような先行投資やサポートが考えられるのか、2020年の先の地域の未来の姿とはどのような姿なのか、また、その姿に向けて企業ができることは何なのかといった問題提起が行われました。

■企業がつなぐ地域のチカラ

第二部では、企業/地域、自治体の取り組みとして、1.新たなモノの流れを生む事例として、化粧品のOEMメーカーである日本ゼトックとヨーグルトを中心に岩泉で地域資源を活用した商品展開を目指している岩泉乳業による新商品開発(龍泉洞のスキンケアシリーズ)、2.新たなヒトの流れを生む事例として釜石市とAirbnbの交流人口拡大に向けた民泊推進の連携協定とその取り組みが紹介されました。

1.日本ゼトックと岩泉乳業の取り組みでは、共同開発のもと、昨年の6月にスキンケアシリーズ第一弾となる化粧水が発売され、好調な滑り出しだったものの、昨年8月の台風10号豪雨で岩泉乳業の本社・工場が被災し、工場機能が完全に停止する状況に見舞われました(今年10月にヨーグルト販売再開)。

会社の存続さえも危ぶまれる中、日本ゼトックで製造していたため継続して販売できた化粧水と、第二弾の開発が経営面や社員の精神面で大きな支えとなったことが、岩泉乳業山下社長から語られました。また、日本ゼトックからは、地域資源を活用した商品を地域の事業者と共同開発することで、地域のファンを含む「地域のチカラ」をブランド力にするという、支援の枠を超えたビジネスモデルにつながっているとの見解が示されました。

2.では、ラグビーワールドカップ2019開催時には、釜石の宿泊施設が大幅に不足すること、また今後、地域の「交流(関係)人口」づくりにおいても民泊を活用した地域の人たちと触れ合う形の旅行・宿泊スタイルが求められているという背景から、釜石市とAirbnbは2016年に連携協定を締結。

その後の協働の取り組みでは、Airbnb登録ホストの中で既にスーパーホストとして活躍している方々を釜石に招き、意見交換や交流会を実施するとともに、英語のパンフレットを準備するなど、受け入れ態勢作りを進めています。また、今後、緊急時に被災者や災害救助隊に無料で宿泊場所を提供する登録緊急災害支援プログラムの策定もおこなっていく予定であることなどが紹介されました。

■地域のビジョンを共有し内外を巻き込む

約3時間半の会議の総括として、「地域が描いているビジョンを共有し、対等な立場でコミットする」、「経営資源の強みを幅広く捉え、提供できる価値を伝える」、「共感を内外に広げ巻き込む」、といったことなどが挙げられました。

参加企業からは、「産業の復興が地域の復興・活性のベースになっていることをあらためて認識した」「業種の壁にとらわれずにさまざまな事業者が関係することで東北のビジネスの可能性を高めたい」等の感想が聞かれ、会議後の名刺交換でも県・企業、企業同士で活発な情報交換が行われました。

今後もかけ橋プロジェクト(県政策推進室・RCF)では、より効果的で発展的なネットワーク構築を推進するとともに、企業のもつ強みや力と地域のニーズをマッチングし、中長期的視野での地域振興に寄与するよう、取り組んで参ります。次回の「岩手かけ橋共創ネットワーク会議」は2018年2月に東京都内での開催予定です。

◆いわて三陸復興のかけ橋「復興トピックス」

一般社団法人 RCF
2011年4月、震災復興のための調査を行う団体として発足。現在は復興事業の立案・関係者間の調整を担う「復興コーディネーター」集団として活動。代表理事は藤沢烈。活動例として、2015年度はいわて未来づくり機構を母体とする「いわて三陸 復興のかけ橋プロジェクト」を岩手県より受託し、岩手県内各地と県外企業・団体の復興支援マッチングを推進している。

2017年10月25日(水)14:58

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