「女装子」たちの恋愛映す、ドキュメンタリー映画

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12月9日、東京・東中野「ポレポレ東中野」でのロードショーを皮切りに、「女装」をキーワードにしたドキュメンタリー映画「恋とボルバキア」が公開される。東京のほか、神奈川・愛知・大阪・広島・愛媛での上映が決定している。(ライター・遠藤一)

11月25日に連続放映を終えた、主人公が性同一性障がいのWOWOWドラマ「片想い」(東野圭吾原作)や、2018年3月にNHK BSプレミアムで放映予定のゲイや同性婚をテーマにした漫画原作のドラマ「弟の夫」など、次第に取り上げられるようになってきたセクシュアルマイノリティー(性的少数派)だが、ドキュメンタリー映画はまだ珍しい。

この作品では「生まれた性別は男性だが、女装して生きる」人間たちを、群像劇のように描く。恋愛をはじめとする彼らの周囲の人間関係をカメラはとらえてゆく。

登場人物の「あゆ」(左)と「王子」(右)と、小野さやか監督(中央)

はじめにアイドルを目指す「あゆ」と親友の「王子」が登場する。2人ともホルモン異常で女性化する身体を持っているが、あえてホルモン治療は行っていない。

「取材対象者たちには、5年前に制作したフジテレビのNONFIXというドキュメンタリー枠の番組取材で出会いました」と小野さやか監督(33)は語る。

「当時、私は女でいることがしんどくて、男性が女性になりたいことが理解できず『男のままの方がいいじゃないか』と思っていたのです。はじめは女装を商売にしていたり、居場所をつくるきっかけにしたりしているのではないかと思っていました。けれど取材するうちに、女装することで人生の目的を果たそうとしているのではと考えました」(小野監督)

「みひろ」は「何のとりえのない自分でも輝きたい」という思いから女装をするようになり、生まれてはじめて男性に恋をした。

小野監督は言う。「取材するうちに、演じ合うことやなりたい自分を他人が受け入れてくれることも愛情表現の一つではないか、と感じました。テレビの45分ではそういったメッセージを出せなかったと思い、映画製作に向けて再取材を決意しました」。

過去に妻子を持ち、現在は女性として生きる「蓮根はずみ」のパートナーはレズビアンの女性「樹梨杏」だ。

「今回カメラを向けた彼ら彼女らは、ふつうの恋愛パターンはあてはまらないことがほとんど」と小野監督は言う。

「結婚や子どものことなど、向かってゆく道が多くの人とは違う。どのように愛情表現をしているのか、つながろうとしているのか答えを知りたい部分がありました」

養父に愛されたい思いがきっかけで女装をはじめ、女装バーを出店した「井上魅夜」の恋人は性同一性障がいだ。

小野監督は2010年に「アヒルの子」というセルフドキュメンタリーを制作、全国でロードショーを行った。帰郷し、ヤマギシ会に傾倒する両親や、性的虐待をした長兄、小野監督が恋愛感情を持っていた次兄などへ思いをぶつけてゆく。

「『自分探し』世代にすごく惹かれる。自分って何だろう。なんで生まれてきたのだろう。性別はアイデンティティにすごく影響する。この社会の中でマイノリティゆえに揺れやすい彼ら彼女らの人生に、どれだけ寄り添っていけるかということを一番大事にしていました」

結婚をきっかけに女装をやめ、現在単身赴任先で週一回女装を再開する「相沢一子」は妻と3人の子の家族持ち。

「登場人物には、みな愛する人や家族がいます。自分らしく生きようと望んでも、傷つける。心残りを抱え、揺れながらそれでも生きる。それぞれの生き方に多様性があるけれど、これは誰でも経験する『青春』の映画なのかもしれません」(小野監督)

(文中敬称略)

◆「恋とボルバキア」公式サイト

2017年12月8日(金)17:01

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