「陸前高田産にごり酒」を原料に化粧品を開発

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岩手・陸前高田の酔仙(すいせん)酒造。東日本大震災で、海岸から2kmの位置にあった本社工場、倉庫など全ての建物が津波によって水面下に沈み、流失した。その後、県内同業者や全国からの支援により、震災後わずか半年で醸造を再開。翌年3月には陸前高田市の隣の大船渡市に新工場の建設を開始。震災から3年後の2014年には「KIBO(希望)」をアメリカで販売し、輸出による販路拡大を目指すなど、復興の最前線で挑戦し続けている企業だ。その酔仙酒造から2017年秋、初めて開発した化粧品が首都圏企業とのコラボレーションにより発売された。(一般社団法人RCF=荒井美穂子)

■ロングセラー商品の新展開

出荷式では雪っこの新酒と並んでのお披露目となった

酔仙酒造の人気商品の一つに「活性原酒・雪っこ」がある。にごり酒タイプの日本酒で、10月~3月末頃までの限定販売。40年以上の歴史をもつ酔仙酒造のロングセラー商品で、地元はもちろん、復興支援などで訪れた県外の人たちの間でも、「岩手のおみやげ」として好評だ。

10月1日には毎年恒例の雪っこの出荷式が行われるが、2017年は、出荷式に合わせてジェル美容液「雪っこオールインワンジェル」も発売となった。

「雪っこオールインワンジェル」は、「雪っこ」の米発酵液と岩手県大船渡市、陸前高田両市の花である椿から抽出した椿油を使い、口腔ケア商品・化粧品メーカーの日本ゼトック(東京・新宿)と共同開発した。

日本ゼトックは東北復興応援を目的に、同社の技術力で地場の素材を原料とした化粧品を製造し、それを地元企業が販売して地域活性化につなげる取り組みを推進している。

岩手では既に久慈・べっぴんの湯、岩泉・龍泉洞の水での実績を持つ。今回は「いわて三陸 復興のかけ橋プロジェクト」を通じて酔仙酒造との共同開発に至り、発売につながった。

■地域にこだわるものづくり

岩手県は県土のおよそ8割が森林で、豊かな自然環境がある。酔仙酒造は「風土」に合った酒づくりを身上とし、「雪っこ」も、クセのない綺麗な水質である岩手県氷上山系の深層地下水を使用し、米もすべて岩手県産と、県産・国産にこだわって作られている。今回の開発でも、「雪っこ」由来の成分以外も地域資源にこだわった。

酔仙酒造のある大船渡市、陸前高田市は椿の北限として知られ、椿の里のまちづくりを進めている。この地域には、椿油を食用や整髪料に活用する文化が根付いていたが、生活習慣の変化によって、このような文化は廃れつつあった。しかし、震災を機に、地域独自の産業資源・観光資源として見直され、椿は地域のシンボルとして地域内外で認知されてきている。

地元の人たちに愛される商品を、との思いから、雪っこオールインワンジェルには「椿油」を配合。それも大船渡市に自生する椿の種子から抽出したものを原料とした。

■新しい顧客へのアプローチ

もう一つ、開発でこだわったのが香りだ。すでに市場にある日本酒配合の化粧品の中には、お酒の匂いをほのかに残しているものもある。

既存の雪っこファンであれば、お酒の匂いが喜ばれるかもしれない。だが、今回のジェルの場合は、雪っこを飲んだことがない若い世代にも使ってもらいたい。例えば子育て中の忙しいお母さんでも、手にとって癒されるような--。

そこであえてお酒を飲めない人でも抵抗感なく使えるように、お酒の匂いを感じさせないことにこだわった。お酒の匂いを感じさせず、親しみやすい香りを目指して、様々な香りを試し、雪っこ自身が持つ香りとのバランスを探った。結果、雪っこの特徴である「甘み」を感じさせる椿をイメージした香りに決定した。

「30代くらいの子育て中のお母さんをイメージして開発を始めて。女性目線で自然派、肌に優しいを大事に、お米と植物由来の原料を使い、無添加処方(パラベンフリー、無着色、無鉱物油、無動物油)でつくりました」(酔仙酒造販売課・岡田喜美恵さん)

パッケージには雪っこでおなじみの子どものイラストを用いながら、雪のかわりに椿を配し優しいピンクベースのデザインを採用、キャップも開閉しやすいワンタッチタイプとした。

復興支援イベントや物産展は地場製品の販売チャンスだが、アルコールの場合は開催条件などにより、販売や提供ができないこともある。「雪っこオールインワンジェル」は、そのような場合にも顧客との接点を広げる製品としても期待できる。

■支援から継続可能なビジネスモデルへ

地元企業の新分野への挑戦に地元の関心も高い

日本ゼトックは、復興支援の一環で岩手、宮城、福島の三県で地元の企業と協力し製品を開発してきた。震災から約7年。多くの企業が復興支援の活動に区切りをつけたり縮小したりする中、なぜ続けているのか。

「地域資源を有効活用し、地元の顔とも言える企業と共同開発、販売を行うことで、地域に思いを寄せる人たちとの新たな接点ができた。地域のファンを含む『地域のチカラ」をブランド力にするという展開は、今までの自社のビジネスにはなかった。支援の枠を超えたビジネスモデルにつながっている」(日本ゼトック大谷浩淑部長)

東北の復興支援をきっかけに始まった、業種の壁にとらわれないさまざまな関係性の中に、東北だけでなく日本全国に通用するビジネスの可能性が育まれている。

◆いわて三陸復興のかけ橋「復興トピックス」

一般社団法人 RCF
2011年4月、震災復興のための調査を行う団体として発足。現在は復興事業の立案・関係者間の調整を担う「復興コーディネーター」集団として活動。代表理事は藤沢烈。活動例として、2015年度はいわて未来づくり機構を母体とする「いわて三陸 復興のかけ橋プロジェクト」を岩手県より受託し、岩手県内各地と県外企業・団体の復興支援マッチングを推進している。

2018年1月23日(火)13:02

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