SDGs対応をどう評価するか(千葉直紀)

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3.「SDG-対応型評価」のはじめの一歩
ラグ博士から「SDG-対応型評価」として、はじめに以下4つの質問を自らに問いかけるよう心がけるよう紹介された。
(1)我々は、正しいことをしているのだろうか?
(2)我々は、これらのことを正しく行なっているだろうか?
(3)これらはうまくいっているだろうか?そうでないならば、どうすれば改善できるだろうか?
(4)意味ある結果を生むために、いかに取り組みの規模を大きくしていくか?

これらの問いを自分たちに問いかけることは、自分たちの評価能力を構築することにつながり、「SDG-対応型評価」のはじめの一歩なのだ。

それに続いて、「SDG-対応型評価」の戦略として「ステークホルダー全員で取り組むこと」、「ターゲット人口の分析やダイナミクス、指標の動きを理解すること」、「可能な将来のシナリオと示唆を探ること」、「結論を導き出すための協議過程をファシリテートすること」などが、紹介された。

評価に求められる条件面では、事業実施者や政策立案者だけでなく、事業の受益者や一般市民などが参画することが有用であり、タイミングよく明確に、かつすぐに実施できる形で評価結果と提言を伝えること、独立型でリアルタイムかつ現実的な評価が推奨されている、との説明があった。

上記を満たす「評価」として、以下が紹介された。

●複雑性に焦点を当てた評価(Complexity-Focused Evaluation):複雑な関係性とその根本的な原因を明確にするための探索
●システム思考(System Thinking):システムの各レベル間の相互関係性を探る
●発展的評価(Developmental Evaluation):学習と適応を繰り返す評価
●エンパワーメント評価(Empowerment Evaluation):コミュニティメンバーはアクティブで継続的な参加者
●社会的排除分析(Social Exclusion Analysis):誰が取り残されているかを判断

4.地域でSDGsを推進させ続けていくために
ローカルSDGs、すなわち地域でSDGsを推進させ続けていくためには、何が必要なのだろうか。本セミナーでは、そこにも言及があった。それは事業実施者や地域のリーダー、政策立案者などが「SDG-対応型評価の推進役」(セミナーでは“チャンピオン”という言葉で説明)になることである。

ラグ博士からは、「ローカルSDGsを実現させるためには、評価が市民や全てのセクターの戦略的リーダー(官民双方、地方自治体、政府を含む)に理解され活用される必要がある」と紹介された。

地域でSDGsを推進するためには、「SDGsの推進役」だけではだめで、「SDG-対応型評価の推進役」が必要である。「SDG-対応型評価の推進役」は、プログラムや政策を改善するための根拠(定性・定量データ)を提供したり、ステークホルダーによるデータの解釈を促したり、プログラムの成功・失敗を理論的に考えたり、ステークホルダーをエンパワーメントするという重要な役割を担う。

これらはまさに「評価」の機能であり、このことが全てのセクターのリーダーたちに理解・活用される必要がある。強力なリーダーによるトップダウンだけでも市民によるボドムアップだけでもダメである。推進のためには、あらゆるセクターを巻き込み、トップ(根拠にもとづく政策形成を促す政府や自治体)とボトム(声があげられる市民)の双方からの働きかけやステークホルダー参加型の継続的なコミュニケーションや学習を行うことの重要性が説かれ、さらにこれを支える持続可能な評価システムをつくること、それに基づき予算を編成することの必要性が話された。

いかがだろうか。SDGsの評価は、ただの指標のモニタリングや後付けのラベリングではない、そして決まった方法論が確立されているわけではないことがお分かりいただけたのではないだろうか。地域の課題や関わるステークホルダー、リソース面での制約など、それぞれ事情が異なる中で、状況を見極めて柔軟に対応していくという現実的な方法を模索していくことが必要なのである。

その他、本特別セミナーでは、源由理子氏(明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科教授)により、国内におけるSDGs評価に関する類似事例の紹介がされた。会場からは積極的な質問が挙がり、我が国における地域でのSDGs推進と、そのための評価の可能性が伝わったのではないかと思う。

*本資料からの引用(和文)は、明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科によるラグ博士セミナー資料の和訳によります。

※デボラ・ラグ博士[Dr. Deborah Rugg]
米国クレアモント大学院大学教授、及びクレアモント評価センター・ニューヨーク センター長。これまで国連評価グループ長、国連事務局監査・評価課長を歴任し、2030 アジェンダ最終交渉時には、国連事務局シニア評価アドバイザーを務める。現在は、全米評価学会理事としても活躍。

◆千葉直紀(ちば・なおき)
CSOネットワーク/インパクト・マネジメント・ラボ担当。中小企業診断士、認定ファンドレイザー。1983年仙台市生まれ。『発展的評価』を用いた評価者育成プログラムの運用や社会的インパクト・マネジメント等を通した社会的事業の改善、マネジメント支援に取り組む。組織診断やファンドレインジングの手法を用いたNPOや中小企業支援などにも携わっている。一般社団法人CAN net理事・事務局長。

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一般財団法人CSOネットワーク
1999年に設立、2011年一般財団法人化。「公正で持続可能な社会に向けた価値ある取り組みを見出し、マルチステークホルダーの参画による社会課題解決を促す」をミッションとし、社会的責任・サステナビリティ推進事業、地域主体の持続可能な社会づくり、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」推進、社会的インパクト・マネジメント事業(インパクト・マネジメント・ラボ)など、幅広い取り組みを行っています。 ウェブサイト:http://www.csonj.org/about/  フェイスブック:https://www.facebook.com/csonj

2018年12月17日(月)13:14

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