アサヒグループホールディングスは4月25日、国際協力機構(JICA)と途上国の農業支援で連携協力する覚書を締結した。ビールの醸造過程で発生する副産物「ビール酵母細胞壁」を加工処理した肥料を、ラオスとインドネシアの農業振興プロジェクトで活用する。農産物の収穫量向上が期待できるほか、農業資材のビジネス拡大を視野に入れる。(オルタナ副編集長=吉田広子)
ASEANなどの開発途上国では、小規模農家の比率が高く、技術や情報不足などから生産性が低く、販売促進や資材購入が効率的に進められていないという。今回の連携では、JICAが展開するラオスとインドネシアの農業プロジェクトに対し、アサヒHDが肥料の提供と技術支援を行う。
「ビール酵母細胞壁」を加工処理した肥料は、植物本来の免疫力を引き出し、根の成長を促進するという効果と、土壌の有用菌を活性化するという2つの効果を持つ。アサヒバイオサイクルが製造・販売し、日本国内ではすでに農作物や園芸作物の栽培に使用されている。
JICAの加藤宏理事は、「途上国では残留農薬問題が顕在化し、安心・安全を求める声が高まっている。ビール酵母由来の肥料は、安心・安全でニーズに合致している」と、連携に至った経緯を説明。「日本の優れた技術製品を積極的に活用し、途上国の課題解決に取り組みたい」と続ける。
インドネシアでは5月から、ラオスでは6月から、肥料の試験導入を進め、増収効果や耐病性向上・忌避効果などを調査する。
アサヒグループホールディングスの勝木敦志常務取締役兼常務執行役員CFOは、「独自技術を生かし、事業活動を通じて課題を解決していきたい。将来的には収益にもつなげたい。途上国を含めた世界で利潤を上げ、同時に世界が豊かになることを目指す」と話した。