論説コラム:ボランティアの孤独をネットでつなぐ「アクトコイン」

原田勝広
オルタナ論説委員
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いつも思う、ボランティアって何だろう、と。

一般的には、近代、市民革命後の「ノブレス・オブリージュ」(高貴な生まれの者は義務を負う)に由来し、その源流はふたつとされる。まず、ヘレニズム思想の人道主義に基づく相互扶助、すなわち博愛。もうひとつはキリスト教の隣人愛による慈善、チャリティだ。

1995年、阪神・淡路大震災で全国から若者が駆けつけ、「ボランティア元年」といわれたが、当時でも「ボランティアは敷居が高い。私はそんなに立派な人間ではない」と敬遠する若者も多かった。ボランティアはまだまだ孤独な善行だったのである。

ボランティアは恵まれた側から貧者への一方的な「贈与」ではなく、「自己実現」の場との考え方が広まり、NPOやNGOの出現もあってボランティアが身近になった。2011年の東日本大震災では、大学生や企業人も被災地に入り、ボランティア参加へのハードルを一気に下げることになった。入社してもCSRだSDGsだと企業が社会の課題に取り組む重要性が日々語られる時代になった。それでもなお、ボランティアというのは、個人の意思で参加するゆえに、いったん現場を離れれば、分断され、一人ひとりが孤独な存在といえるだろう。

そんな時、ボランティアに対し独自のコインを付与するオンラインサービス「アクトコイン」を知った。ことし1月にスタートしたばかりで、仕組みは簡単だ。教育、福祉、街づくり、国際協力などNPO、NGOのボランティアやイベント、フォーラム、セミナーに参加すると1時間あたり1,000コインをもらえる。寄付した場合は、寄付額の10%のコインが付与される。溜まったコインは1コイン=1円換算でNPOなどに寄付したり、環境や社会に配慮した企業の商品と交換できるようにする。それをブロックチェーン(分散型台帳)技術の活用で可視化し、ネットワーク化する。現在、登録ユーザーは2,300人だが、1年後には3万人、3年以内に10万人を目指すという。

ボランティアとして活動した分に対価を与えるという考え方は目新しいものではない。例えば、先駆的存在である1994年設立のニッポン・アクティブ・ライフ・クラブ(NALC)はボランティアとして働いた時間を点数に換算して預託し、逆に将来、自分が介助、介護、犬の散歩、草取りなどのボランティア・サービスを受ける場合、でその点数を使える。会員相互の助け合いを応援しているわけだが、その点数は地域内の商店街での物品購入にも活用できるようになっている。

相互の助け合いよりも地域経済再生に比重を置いた仕組みが2000年頃ブームとなった地域通貨で、現在も300ほど存在している。地域通貨は淘汰が進む中で、総務省が主導し、自治体が運営する電子地域通貨「自治体ポイント」が新たに登場、ブロックチェーンの技術を活用して進化し続けている。

アクトコインはソーシャル・アクターを「見える化」し、個々人をつなぐだけでなく、地域の枠を飛び出してグローバルに展開し、かつ他の社会貢献活動グループともつながる可能性に満ちた仕組みだが、課題もある。

まず、対象となるNPO、NGOの選定だ。現在、こどものホスピスプロジェクト、コモンビート、DxP、ファストエイド、助け合いジャパン、ピープルデザイン、ACE,ケア・インターナショナルなど70のNPO、NGOが登録されている。SDGsのゴールに沿っているという触れ込みで目新しさもあるが、NPO、NGOの社会的信頼度は必ずしも高くない。ここに名前をあげた団体は大丈夫だとは思うが、中には、コンプライアンス意識の低い団体、自己資金が十分ではなく、行政や企業の助成金、補助金頼りのところもあると聞く。数を増やす場合、評価を厳格にしないとシステムそのものの信頼性を損なう。この点をどうクリアーするか。

もうひとつは企業の参加をいかに促すかという問題である。かつて企業は、NPO、NGOを資金の面で応援する側だったが、ESG時代を迎え、今や企業自身が自社のリソースを使ってSDGsのゴールをいかに達成するかに腐心している。企業からの寄付を期待するのではなく、企業に社会的課題解決のチャンスを提供できるような力のあるNPO、NGOが存在し、連携プロジェクトを作り上げるような可能性につながる仕組みであれば、ビジネスセクターの支持を集められるのではないかと思う。(完)

原田勝広
オルタナ論説委員
日本経済新聞記者・編集委員として活躍し日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門はCSR論、NGO・NPO論、社会起業家論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』『ボーダレス化するCSR』など多数。

2019年8月21日(水)12:11

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