善意のつながり生むメディアに期待

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ネット上に広がったプロのクリエイターらによる節電ポスター

東日本大震災では速報性などを持つソーシャルメディアに注目が集まった。それに加えて筆者(私)は「善意のつながり」に期待する。自らの体験を通じて、その可能性を考えたい。

私は3月11日、東京東部の仕事場のマンションで地震を体験した。第一撃の揺れの激しさにすぐに外に出て15分ほどして家に戻った。家族の安否を気にした。過去の災害取材で、電話が有線も携帯も地震と同時につながらないと知っていた。家族は知らない可能性が高いと思ったが、NTTの災害ダイヤルに伝言を残した。後から聞くと無事だった家族はやはりそれを知らなかった。

ツイッターはつながっていた。家族はやっていないが知人が何人も登録していた。「大丈夫ですか」。その呼びかけに反応があり数人の安否を確認した。役立つかもしれないと思って、ツイート(TW:短文のつぶやき)で災害ダイヤルの使い方「171+1 家番号で伝言吹きこみ」と書き込んだ。すると100人以上の人にリツイート(RT:転送)された。

その日は余震が続いた。「周囲に障がいを持つ方、お年寄りがいたら必ず助けましょう」。呼びかけるとRTがまた100以上あった。携帯、スマートフォンなどしか情報源のない人もいた。私は正確な津波、震度、交通情報をTWし、東京近郊の人にRTが繰り返された。役立ってうれしかったし、後で感謝の言葉もいただいた。

ソーシャルメディアとは、ツイッターやSNS、ブログなどネットを使った双方向の情報媒体の総称だ。筆者のささやかな体験は、その新しい可能性を示しているのではないか。もちろん震災ではその限界も露呈した。ネット経由で不確かな情報が流布しデマ、そして不安や恐怖という悪しき感情を広げた。

しかし私はその陰よりも可能性に期待する。ソーシャルメディアの発信源は市民一人ひとりで無数にある。発信者が限定されないために速報性に優れる。震災では新鮮で市民目線の身近な情報は人々の関心を集め、人々が情報によってつながった。その一例が節電だ。人々が必要性を訴え、デザイナーなどが呼びかけのポスターを書いて拡散した。それが都内の街中に何点も貼られている。

新聞、テレビなどの既存メディアも変わり、ツイッターを積極的に活用した。政府、自治体もネット、ツイッターでの情報発表量を増やした。これまで情報は公権力や記者クラブなどの既得権益に守られたメディア企業に独占されがちだった。その状況はまだ残るものの、震災で最近進んでいる市民参加型の情報流通への変化が加速したことは間違いない。

東日本大震災の復興には長い時間がかかる。新しい情報の流れによって生まれた「善意のつながり」は再生に必要な基盤の一つになる。これを大切に育てたい。(オルタナ編集部=石井孝明)2011年3月29日

2011年3月29日(火)9:59

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