東京まで避難 でもまだ眠れない

地震で被災した人たちの心のケアが課題になっているが、被災地から安全な東京へ避難してきた人たちの間にも依然として後遺症が残っている。専門知識を持った医療スタッフのボランティアが求められそうだ。

都内足立区の東京武道館では300人を越える被災者が避難生活を続ける。大部屋暮らしだが、3度の食事提供やシャワー、ジムの利用など設備面では充実している。だが、被災者の心の傷はまだ癒えていない。

福島県広野町から東京武道館へ避難してきた田所継男さん(62)は、地震のあった13日から一睡もできていない。安全なはずの東京へ来ても病院通いが続く。

地震のときは夜勤明けのため自宅で寝ていた。集落のまとめ役が「7メートルの津波が来る」と呼びに来て、高台へ避難した。家は無事だったが「横になると、津波で傾いた家が壊れていないか、父親の位牌はだいじょうぶか、心配事が頭に浮かんでぜんぜん眠れない」。

地震の直後、原発のことはまったく頭になかった。「東電の説明を信用していたから、地震が来ても心配はないと思っていた。原発は安全だと広野まで講演をしに来た有名人の人たちは、一体いまどう思っているのか」と憤りを見せる。

馬場美代子さん(51)は、息子の龍君(10)と二人で、福島県いわき市小名浜から避難してきた。美代子さんは東京生まれのため、避難所での生活に違和感はないが、東京へ来てから子供が眠れなくなり心配している。

東京武道館によると、避難所の医療体制は救急救命士と保険師が昼間常駐し、足立区の医師会から医師の派遣が毎日1時間ある。避難民には夜眠れない人も少なくないようで、スタッフの判断で昼間に個室をあてがっているという。(形山昌由)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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