原発事故を機に「無関心層」が動き始めた

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ドイツのベルリン、ハンブルク、ミュンヘン、ケルンなどでは3月26日、原発稼働停止を求める25万人規模のデモが行われた。一方、東京・銀座で27日に開かれた反原発デモの参加者は1200人。東京はドイツの、たった200分の1という言い方もできる。

だが、「通常は30人ぐらいでこじんまりとしたものだったが、福島原発の事故を受けて、今回の参加者は40倍に膨れあがった」(原水禁の井上年弘事務局次長)=ウォールストリートジャーナル日本版記事。

200分の1と40倍。そのどちらの数字も正しい。

中部電力の浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の停止を求める署名運動では、3月13日から17日までの4日間で、約23,000件の賛同の声が集まった。

日本では世界3位の55基もの原発が動いているのに、ほとんどの人は無関心だった。少なくとも原発事故が起きるまでは。

何かが変わりつつある。

原発問題は、環境問題や貧困、人権の問題に興味を持つ上での「ゲートウェイ」だと、これまでの経験から思う。

原発問題に興味を持たずして、環境問題や海外の貧困問題に思いを馳せる人は極めて少ない。

その意味で、今回の福島第一原発の事故に唯一の光明があるとすれば、日本の市民活動や消費者行動が変わることである。

これまでは、原発には懐疑的であった人も、変に左翼的と見られることが嫌で、多くの人が口を閉ざしてきた。

メディアも同罪である。

「オルタナ」もこれまで、原子力反対の特集を組むことは躊躇した。原発がCO2削減で果たす役割も無視できなかったし、こんな大きな事故が起きるとは想像できなかったからだ。左翼雑誌と見られることも嫌だった。編集長として、これを猛省したい。

ただし、オルタナは創刊当初から、原子力発電を推進している企業からは広告はもらわないことに決めていた。

AVEDAという米国の自然派化粧品会社から「うちは原子力を推進している企業の広告を載せる媒体には広告を出さない」と言われ、「AVEDAさんと東電さんであれば、喜んでAVEDAさんを取ります」と答えた経緯があるからだ。

今までは、変なイデオロギーの呪縛で、声高に「反原発」を叫ぶことが憚られてきたが、今は原発だけではなく、エネルギー構造の大幅な転換ができる「最後のチャンス」だ。

原発をいま直ちに全廃することは国家戦略として非現実的だが、もちろん新規の原発建設はすべて凍結すべきだ。その発電におけるシェアは、出来るだけ早く20%以下、できれば10%以下に抑えたい。

その代わりに、太陽光、太陽熱、風力、小水力、地熱、バイオマス、波力、廃棄物発電、R水素――などの自然エネルギーを拡大する。エネルギー源の分散は、当然ながらリスク分散になる。

これを推進できるかは、消費者として、有権者として、国民が「無関心」から脱皮できるかに掛かっている。次の総選挙は間違いなく、エネルギー政策が争点になる。

東日本大震災発生の当日(3月11日)、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス発電に対する「全量買取り法案」が閣議決定された。

これらの自然エネルギーに対しては今後10年から20年間、1キロワット当たり15円から20円の範囲内で全量が買い取られ、その分は電気料金に加算される。

この法律に魂が入るかどうかも、ひとえに国民、市民、消費者、有権者がどれだけ意識を変えられるかに掛かっている。

東京・銀座のデモに、初めて参加した1100人余りの勇気に期待したい。                                           (オルタナ編集長 森 摂)

2011年3月30日(水)23:08

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