賠償案、電力企業と地域独占を温存か

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高濃度汚染水の流出は甚大な海洋汚染も引き起こした(東京電力広報資料より引用)

政府試算で4兆円。10兆円以上の可能性も――。東日本大震災にともなう東京電力福島第一原発事故をめぐる巨額の損害賠償をどう実行するかに注目が集まっている。3日に朝日新聞が報じた賠償枠組みの政府原案は、東電負担が2兆円で、東電管内の電気料金を16%も値上げするというものだ。しかしこれは東京電力の温存に主眼を置くもので、企業責任を軽減し、電力企業の地域独占体制にメスを入れることなく国民に賠償負担を押し付けるものでしかない。

自民党の河野太郎衆議院議員は今回の政府原案について、4日のブログで「なぜ、東京電力が起こした事故の賠償を国民が負担しなければならないのか」と批判。「経営陣、株主、金融機関がそれぞれの責任を果たさなければならない。経営陣は総退陣すべきだし、株主価値を残したまま国民が負担を求められることがあってはならない」とし、東電が率先して賠償負担を負うべきだとの考えを示した。

東京電力の総資産は2009年度決算で13兆2千億円に上り、社債と株式資産の合計は7.2兆円に達する。3月28日付フィナンシャルタイムズ記事では、東電は今年分の社債を償還した後でも約3.7兆円の賠償が可能だと指摘する。つまり、現状の政府試算での賠償額の大半を東電単独で支払えることになる。

もっとも賠償額はさらに増加する公算が強く、10兆円以上に達するとの見方もある。今回の政府原案は東京電力の債務超過を回避する狙いもあるが、一方で資産整理やリストラなどが徹底されない恐れもある。同社の清水正孝社長は4月28日、役員報酬の半額カットを「大変厳しい数字」と語ったが、企業責任の重さ、そして国民感情からすれば全額返上もやむを得ないだろう。

いずれにせよ、株式資産などに一切手を付けず、電気料金に上乗せする形で賠償負担を国民に求めるのは全く筋が通らない。

今回の東電原発事故では、国策にもとづく電力企業の地域独占体制が電力自由化、および自然エネルギー導入の拡大を阻んでいたことも明らかとなった。発送電分離を始めとする東京電力の抜本的な再編を抜きに、賠償の枠組みを描くことは許されない。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年5月4日

河野太郎公式ブログ

2011年5月5日(木)9:00

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