ポスト震災で注目の働き方「コワーキング」とは

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ニュー・ワーク・シティ創設者に聞く

トニー・バッチガルーポ氏

3月の東日本大震災直後に発生した大勢の帰宅困難者、計画停電、さらには今夏の節電に伴う在宅勤務の広がり――。これまで当たり前だったオフィスに毎日通勤して仕事をするという働き方が、改めて問い直されている。こうした中、「せっかくの人生、価値ある仕事をしたい」「身近な人々との絆を大切にしながら働きたい」という思いを持つ人々の間で、「コワーキング」(Coworking)という新たな働き方への共感が広がっている。

コワーキングとは、フリーランスなどの形で独立して働く個人が、オフィス環境を共有して相互にアイデアや情報を交換しながら相乗効果を生み出そうとする働き方のこと。2000年以降海外で徐々に広がり、世界20都市以上にある 「ザ・ハブ」などがコワーキング・スペースとして知られている。このほど来日した米ニューヨークのコワーキング・スペース「ニュー・ワーク・シティー」(NWC)共同創設者のトニー・バッチガルーポ氏に、コワーキングの醍醐味と意義を聞いた。(聞き手・オルタナ副編集長 木村麻紀)

■ オフィス+αのある場所を

――2007年にコワーキングを体験し、1年後にNWC を始めた当時、コワーキングの何があなたを魅了したのか。

そこに集まる人々だ。当時、IT企業のプロジェクトマネジャーとして在宅勤務をしていたが、周りに誰もいない状態は孤独で、とにかく誰かを求めていた。こうした状況の中で、普通のオフィスの良い環境を残しながらも、面白い仕事をしている人や協働できそうな人とも知り合えるような、何か新しいものを作りたいと思うようになった。

初めてのコワーキング体験で、私は圧倒された。Tシャツメーカーで働いている人から携帯電話のアプリ開発者まで、みんな何かカッコいい仕事をし、楽しく働いていたのが印象的だった。

オンライン上で人と人とがつながることが技術的に可能になっても、オフラインでのつながりは必要。コワーキングは、テクノロジーを使って疎外感をなくしながら、より健康的に仕事をすることを可能にする働き方だ。

――NWCでは、どのような人たちが仕事をしているのか。

フリーランスから起業して間もない小規模事業者、企業に雇われている在宅勤務者までいる。職種では、技術系、デザイナー、ライター、弁護士、コンサルタント、マネージャー、NPOスタッフなど。最初にコワーキングが広がった技術系が多いが、他の業種にも広がっている。コワーキングが技術系で最初に広がったこともあって、約75%は男性だ。最も多い年代層は25~40歳。NWCには、下は17歳から上は62歳までいる。

利用者の半数はほぼ毎日利用し、残りの半分は1週間に1回程度利用している。このほか、いつでも利用できるドロップインという使い方も設けている。

――NWCの利用者の間でどのような協働が生まれているのか。

私の友人が設立した「パーぺチュアリー」というウェブサイトをアーカイブする会社は、これまでで最大の成功例だろう。彼はNWCのメンバーだった頃に1人で起業し、他のメンバーとともにチームをつくり、メンバーを契約社員として雇った。その後どんどん成長し、チームごとNWCを出て別の場所にオフィスを持った。他にも、小さなプロジェクトベースで日々協働が行われている。

■コミュニティーを育て、コミュニティーに根差す働き方

――「シェアオフィス」「インキュベーション施設」「コワーキング・スペース」の違いは何か。

米ニューヨークにあるコワーキング・スペース「ニュー・ワーク・シティー」

目的と優先順位が根本的に違う。ビジネスを育てるためのものか、1人の人間として関わるコミュニティー(共同体)を育てるためのものか――。ビジネスを育てるインキュベーション施設は沢山あるが、これらにとってコミュニティーを育てることは二の次だ。

私が考える真のコワーキング・スペースは、まず人が必要とするコミュニティーを育てることを優先し、次にその人の仕事を支援する。ビジネス志向の施設は既に沢山あるが、コミュニティーを育てるコワーキング・スペースには成長の余地がある。

コワーキングは技術系や起業したての人たち向けと捉えられがちだが、それはコワーキングの一つの側面にすぎない。コワーキングとはコミュニティーを育てること。私達も、ウォール街の活性化プロジェクトに国や行政とともに関わっている。図書館をコワーキング・スペースにするというのも、良いアイデアだと思っている。

――「コミュニティーを育てる」というのは、具体的にはどのようなことか。

メンバーに「来て良かった」という体験を持って帰ってもらうためには、こちらが何か指示するのではなく、メンバーの話を聞き、メンバーのニーズに応えることをすれば良いだけだ。コミュニティーとは参加すること。メンバーを顧客と捉えず、パートナーと捉えることが大切だ。

■家族との時間もコントロールできる働き方(次に続く)

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2011年8月8日(月)9:12

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