日系ユダヤ人の予想する「お金を信用しない」未来

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『ファイナル・クラッシュ 世界経済は大破局に向かっている』(石角完爾著、朝日新聞出版)(定価本体1600円+税)

ユダヤ人は、私たち日本人には「謎めいた」存在であろう。著者の石角氏は国際弁護士で、日本人でありながら改宗してユダヤ人になった不思議な人物だ。この本は、彼が閉ざされた国際金融のサークルで教えてもらった英語の本『ファイナル・クラッシュ』を自ら翻訳して解説を加えたものだ。

石角氏によれば、英語版の本は2007年春にヒューゴ・ビューロー(仮名)という英国のファンドマネージャーが顧客のために自費出版した後で、国際金融界に「予言書」として知られた。なぜならば2008年以降の国際経済の動きを的確に予想したためだ。投資銀行などの過剰な投機活動による金融の崩壊、公的債務の増加による各国の経済システムの危機、通貨切り下げ競争、金の高騰という現実の推移を当てた。

同書は、中国などが米国債を買う力のなくなったときに金融メルトダウンという「最後の崩壊」(ファイナル・クラッシュ)が起こるとする。これらの結論は「多すぎるものはいつか暴落する」という普遍的な経済原理、さらに「カネがカネを生む」現代の金融システムの異様さ、そして過去の経済崩壊の歴史の研究から導かれたという。

石角氏はヒューゴの見解に同意した上で、日本のクラッシュも避けられないと喝破。東日本大震災で露呈した政府の能力の低さ、1000兆円を超える政府債務があるためだ。「日本を愛しても政府は信用してはいけない」。そして被害の少なそうなシンガポールや北欧への脱出を勧める。

石角氏は世界と日本の「その後」も予想する。誰もお金を重視しない社会がやってくるというのだ。人々が絆や幸せを大切にして、質素や倹約を旨として過剰な消費に踊らず、自然エネルギーを使う小規模なコミュニティがつくられるという、「身の丈にあった生き方」が広がる。それはユダヤ人の伝統的な生き方でもあるそうだ。

石角氏は「大破局の到来を信じるも信じないもあなた次第」と読者に示す。この本を材料に、社会と自分の生活の持続可能性、そしてお金から自由になる未来を考えることは、私たち一人ひとりを物理的にも、精神的にも救うことになるかもしれない。(オルタナ編集部=石井孝明)

2011年10月19日(水)9:00

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