生活保護「受給者最多」のカラクリ

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厚生労働省は9日、全国で生活保護を受けている人の総数が今年7月時点で205万495人に達したとの統計結果を発表した。1951年度の月平均204万6646人を超えて過去最高を記録した形で、各紙は「財政を圧迫」(毎日、産経)などと大きく報じている。しかし、この数字にはある「カラクリ」が隠されている。

■見落とされた「保護率」

文芸評論家で野宿者ネットワーク(大阪市)の代表を務める生田武志氏は自身のウェブサイトで、今回の発表をめぐる報道で見落とされている「保護率」という数字に注目する。

保護率とは、全人口に占める生活保護受給者数の割合を示す数字のことで、生田氏は受給者数が過去最多となった今回の保護率が約1.6%であるのに対して、1951年度の保護率は2.4%で過去最高だったと指摘する。

その上で「実質的には1951年の方がずっと『多かった』。また日本の保護率は先進諸国の中で際立って低く、現状でも他国の3分の1以下ぐらいで、そんなに大騒ぎする数字ではない」と言う。

■仕事がないのが最大の問題

むしろ今回の統計で注目すべきは、働ける世代を含む「その他の世帯」の受給が前年度より5万5千(32%)も増加した点だ。この傾向は2008年9月のリーマン・ショック前後から特に顕著で、背景には労働分野の規制緩和にともなう非正規労働者の急増がある。現在、非正規労働者は全労働人口の3分の1以上を占める。

世帯類型別の被保護世帯数の推移。働く世代含む「その他の世帯」の伸びが突出している(厚生労働省資料から引用)

生田氏も先出のサイトで「最近受けた相談の大半は『派遣切り』だった。『低賃金で、企業の都合でいつでも首を切られてしまう』労働の形が広がってしまった」と述べ、不安定な雇用形態が生活保護の増加に結びついている現状を指摘する。

貧困の原因を断たなければ受給者数は減らない。「こんな労働者が増えれば、貧困が激化し、生活保護が激増するのはある意味で当たり前」と生田氏が指摘する通り、安定して働ける仕組み作りや、行政が働く場を用意する「公的就労」などのセーフティーネットの整備などが急務だ。

生田氏は「生活保護は受給者本人にとっても社会からの孤立、差別などの様々な不利益がともなう。それよりは公的就労の方が本人にも社会にもメリットが大きい」と話している。(オルタナ編集部=斉藤円華)2011年11月10日

2011年11月10日(木)15:24

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