自然との協業が生んだ多様性――「テマヒマ展 〈東北の食と住〉」

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芸術や表現だけが文化ではない。東北に息づく生活文化にスポットライトを当て、その再評価を行うのが21_21 DESIGN SIGHT(東京・港)で開かれている「テマヒマ展 〈東北の食と住〉」だ。

会場には懐かしくも珍しい、寒干し大根、にんにくナイフ、樺細工などが並ぶ。東北の「食と住」の日用の品々が、博物館ではなく、美術館の領分である「アート」として捉られ、そこに潜む価値があぶり出される。

たとえば、白砂糖を用いない安価な「駄菓子」。筆者は東北6県のお菓子の豊富さにまず驚かされた。それぞれ原材料、製法は異なるが、これは生み出した歴史、風土、社会の違いにほかならない。東北というひとまとまりではなく、ひしめき合う無数の生活文化。会場では、こうした多様性が生み出す美しさを、開放感のあるインスタレーションで展示する。

この多様性を生み出すものは何だろうか。本展では、東北の生活文化が膨大な労力と時間によって生み出されてきたことが、製造工程の展示、さらに映像作品、補足の説明パンフレットなども交え、提示される。臼は製材から完成まで5年を要し、南部箒は刈り取ったほうきもろこしを揃えて選定分類する作業だけでも、5人がかりで1カ月半から2カ月かかるという。

これらの品々は、昨今の悪弊である「標準化」「規格化」とはまさに対極にある。風土や文化に最適化された、りんご剪定鋏、いぶりがっこ(日照時間の少ない山間部で生まれた囲炉裏干しの大根)などはその代表例だろう。

いずれの展示品も、多くの人々の自然環境や素材との長年の格闘から生み出されたものだ。これは自然との協業の結果と呼べるかもしれない。そこに潜む「英知」あるいは「美」が、目に見えるかたちとして会場ではあらわされている。

本展は、昨年7月に開催の特別企画「東北の底力、心と光。 『衣』、三宅一生。」が発端となっている。この経験をもとに、三宅氏とともに21_21 DESIGN SIGHTのディレクターを務めるグラフィックデザイナーの佐藤卓氏、プロダクトデザイナーの深澤直人氏を中心にプロジェクトチームが結成され、入念な現地リサーチのもと作りあげられた。

モードファッションは現代の最先端を行く商品だが、一方で驚くまでに製造工程が複雑かつ膨大で、昨今隆盛の規格化とはまさに真逆である。本展の着想と実現には、施設のディレクターの一人である三宅一生というデザイナーの存在を抜きに語れないだろう。(文・写真=美術・文化社会批評 アライ=ヒロユキ)

全体展示風景

多彩な東北6県の「駄菓子」

凍みイモ(岩手県九戸郡野田村)

制作工程も展示(りんご剪定鋏、青森県弘前市)

インスタレーションとして展示された、津軽のりんご箱。制作過程の映像もある

写真家・西部裕介氏による「13職種24職人の手」

「テマヒマ展 〈東北の食と住〉」
2012年4月27日(金)〜8月26日(日)
11:00〜20:00(入場は19:30まで) 休館日:火曜日
21_21 DESIGN SIGHT
(東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内)
TEL03-3475-2121
http://www.2121designsight.jp

2012年7月31日(火)11:14

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