備蓄米騒動の行き着く先は輸入増なのか

記事のポイント


  1. コメの価格上昇を抑えるため備蓄米の放出が始まった
  2. だが、「競争入札」で備蓄米が出回らないのは「常識」だ
  3. 小泉農水大臣はコメの輸入を示唆するが、どこに行きつくのか

この連載は「常識と非常識の間」ということで始めたが、「常識」が別の視点から見れば非常識であったり、その逆もあったりする。そして多くの場合、真実はその真ん中あたりにある。だから当たり前と思っている常識も、時々は疑ったり検証してみたりすることが大切だ。

今、世界は再び戦争の時代になりつつある。グローバル化を先導してきた米国が一国主義に舵をきり始めた。東アジアではロシアと連携を始めた北朝鮮と中国。こうなっては米国の尻尾を必死でつかまざるを得ない韓国と日本。台湾有事でシーレーンが封鎖されれば、たちまち国の存立の基本である食料とエネルギーの枯渇に見舞われそうな「孤立する日本」という構図をリアルに感じるようになってきた。

備蓄米を巡り、安さだけを求める表層的報道に辟易している。今は、小泉進次郎新農水大臣が就任早々断行した「備蓄米の随意契約」によって中間を省き小売事業者と直接契約し、5㌔㌘2千円という価格で拡販しているニュースで埋まっている。その先に何があるのか。

そもそもコメの価格上昇を抑えるため備蓄米の放出が始まったが、最初の「競争入札」は高い価格を提示したものに落札される。

事実、当初の落札価格は60㌔㌘あたり2万2737円で、90%以上をJAが落札。日本農業新聞の記事によると、備蓄米の政府買い入れ価格は1万1879円とあり、原体のまま2万2737円で売るのは暴利以外の何物でもない。

これではJAが買い負けした21万㌧を政府が備蓄米を使って補給したといわれても仕方ない。そのころ
の生産者価格は3万円を超える勢いで、4万円超えの声も聞こえていた時期だ。JAは労せずして、極めて安いコメを手に入れたことになる。

■追及しない報道に違和感

有料会員限定コンテンツ

こちらのコンテンツをご覧いただくには

有料会員登録が必要です。

tokuemichiaki

徳江 倫明(オーガニックフォーラムジャパン会長)

1951年熊本県水俣市生まれ。78年「大地を守る会」に参画、有機農産物の流通開発を行い、88年日本初の有機農産物の宅配事業「らでぃっしゅぼーや」を興す。その後オーガニックスーパー、有機認証機関の設立などを手がけ、環境と食の安全をテーマにソーシャルビジネスの企画開発に挑戦し続けている。現在は(一社)フードトラストプロジェクト代表理事、生産と販売を繋ぐ“東京産直オフィス”FTPS株式会社を運営。

執筆記事一覧
キーワード: #農業

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。