オルタナ総研統合報告書レビュー(41): 九州電力

記事のポイント


  1. 九州電力は、「資本コストと資本収益性」を意識した経営を実践している
  2. ROE、PERの向上を目指す
  3. 取締役会で適切な経営資源配分、事業ポートフォリオの最適化を進める

九州電力は、「資本コストと資本収益性」を意識した経営を実践中です。PBR1倍以上の継続に向け、資本コストを上回る資本収益性の実現(ROEの向上)、ならびに足元の業績回復・株主還元による信頼獲得、将来の成長性に対する評価獲得(PERの向上)を具体的施策の2本柱に据えています。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

九州電力統合報告書2024

九州電力は、2023年3月に東京証券取引所フォローアップ会議が要請した「資本コストと資本収益性」を意識した経営を実践しています。

九州電力統合報告書2024の中で木戸啓人コーポレート戦略部門長は、「ROICを活用した資本効率の向上を図るとともに、非財務面の取組み強化により、持続的な企業価値向上を実現します」と強調しています。

九州電力の具体的取り組み方針の要旨は、次の通りです。

  1. 継続的なPBR(株価純資産倍率)1倍以上の達成にはROIC(投下資本利益率)を活用した資本効率の向上が必要である。
  1. 具体的には、ROICマネジメントサイクルの着実な推進や、継続的・安定的な利益創出と財務基盤の強化・株主還元の充実といった財務面の取組みにより、中期的なROE(自己資本利益率)8~10%程度を実現する。
  1. PER(株価収益率)については、財務面の取組みに加え、カーボンニュートラルや人的資本等の非財務面での取組みを強化し、東証プライム市場平均の水準を目指す。
  1. PBRの向上に関しては毎年、取締役会で足元のROEとPERの数値とその要因、各経営指標に対する進捗状況について、分析・確認を行う。
  1. 今年度は、純粋持株会社体制への移行により、各事業でROICを意識した経営を加速させ、適切な経営資源配分を行うとともに、事業ポートフォリオの最適化を進めていくことを確認した。
  1. 各事業所やグループ会社との対話(社員と経営層との対話)の機会を活用し、従業員に対して、ROICツリーを用いたROIC経営の重要性や、各事業所における必要な取組みについて、経営層が直接説明している。
  1. 自己資本比率は目標の20%に向け、安定的な資金調達や事業リスク等に対応する財務バッファ確保の観点から、適正な自己資本の確保に努める。
  1. 当社の経営状況や今後の成長に向けた戦略を、株主・投資家等資本市場に理解いただくため、積極的な情報開示や対話活動の更なる充実を図る。

東京証券取引所フォローアップ会議要請の期待は、持続的成長に繋がる「事業ポートフォリオの見直し」です。

次回統合報告書では、2030年連結経常利益目標1500億円に対する「事業ポートフォリオ別実績」を開示されたらいかがでしょうか。

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室井 孝之 (オルタナ総研フェロー)

42年勤務したアミノ酸・食品メーカーでは、CSR・人事・労務・総務・監査・物流・広報・法人運営などに従事。CSRでは、組織浸透、DJSIなどのESG投資指標や東北復興応援を担当した。2014年、日本食品業界初のダウ・ジョーンズ・ワールド・インデックス選定時にはプロジェクト・リーダーを務めた。2017年12月から現職。オルタナ総研では、サステナビリティ全般のコンサルティングを担当。オルタナ・オンラインへの提稿にも努めている。執筆記事一覧

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キーワード: #サステナビリティ

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