記事のポイント
- アサヒグループは、事業・社会インパクトを可視化している
- 社会インパクトは、農業資材切り替え時の収穫増量を試算した
- トマトで1.21倍、みかんで1.20倍の収穫増量となった
アサヒグループは、サステナビリティ活動によって創出される事業・社会インパクトを可視化する取り組みを進めています。社会インパクトの可視化では、「農産物生産者のWell-being向上」への貢献の手段として、農薬などから「ビール酵母細胞壁由来の農業資材」に切り替えたことで得る農産物生産者の収穫量増加の影響金額を試算しました。収穫量増加割合は、トマト1.21倍、みかん1.20倍でした。(オルタナ総研フェロー=室井孝之)
アサヒグループは、サステナビリティと経営の統合の実現に向けて、サステナビリティ活動によって創出される事業・社会インパクトを可視化する取り組みを進めています。
経営管理できる重要な指標の特定により、事業の持続的な成長を実現し、社会へのインパクトをさらに創出でき、
定量を示すことでより高度な情報開示につながり、すべてのステークホルダーとのエンゲージメントを高められると考えています。
2023年は、インパクトの可視化の土台となる「価値関連図」の作成、事業インパクトならびに社会インパクトの可視化に取り組みました。
事業インパクトの可視化では、アサヒ飲料社のラベルレス商品を事例に算出式を構築しました。
直接的な効果は、サステナブルな商品・サービスの算出式イメージを、「ラベルレス商品販売金額×消費者の購入理由」ならびにリスク回避による収益効果の算出式イメージを、「ラベルレス商品によるCO2排出削減量×ICP(Internal Carbon Price)」としました。
間接的な効果は、ラベルレス商品のCO2排出量削減の取り組みは、消費者エンゲージメント向上(コーポレートブランド価値向上)につながり、さらにブランド・商品価値向上へつながり、最終的には企業全体の商品の売上収益の増加つながる算出式を構築し、間接的な効果、直接的な効果とも定量を示すとしています。
社会インパクトの可視化では、インパクト加重会計の手法を活用して、アサヒバイオサイクル社「ビール酵母細胞壁由来の農業資材」を対象としました。
目的は、同グループが「コミュニティ」の重点活動である「農産物生産者のWell-being向上」への貢献です。可視化はその実現のための手段です。
算出対象の特定は、農薬などから「ビール酵母細胞壁由来の農業資材」に切り替えたことで得る農産物生産者の収穫量増加の影響金額を主な対象としました。
調査対象農作物は、野菜・畑作と果樹のケースの2グループに分け、それぞれの収穫量増加の影響金額とCO2削減効果金額で社会インパクト金額を試算しました。
算出結果は、野菜・畑作のケース(調査対象農作物: トマト)では、収穫量増加割合は、1.21倍、社会インパクト金額は、64.9億円、農地1ha当たり換算では、115.4万円でした。
果樹のケース(調査対象農作物: みかん)では、それぞれ1.20倍、16.2億円、117.2万円の算出結果となりました。
同グループは、社会インパクトの創出とともに、この可視化の取り組みの先駆者となるべく、引き続き、挑戦していくと強調しています。
今後は、日本人の成人のうち、お酒を飲まない人の割合は、2019年時点で男女計で約55%という調査がある中、ノンアルコール・低アルコール飲料などのビール隣接カテゴリーであるBAC(Beer Adjacent Categories)の社会的インパクトを試算されたらいかがでしょうか。