自動車は「終わらせ方」を考える時が来た: 電動化の本質は「巡り」

記事のポイント


  1. バッテリーの大容量化などEVの覇権争いは激化の一途をたどる
  2. しかし、スペック競争の裏側に潜む資源の問題は見過ごされがちだ
  3. メーカーに問われるのは、スペック表の数字を競う力ではない

バッテリーの大容量化などEVの覇権争いは激化の一途をたどるが、スペック競争の裏側に潜む「資源」の問題は見過ごされがちだ。自動車メーカーに問われるのは、スペック表の数字を競う力ではなく、「分解のしやすさ」や「海外流出を防ぐ回収スキーム」だ。電動化の本質は限られた資源をいかに賢く使い、いかに循環させるかという「巡り」のデザインであり、まさに自動車は「終わらせ方」を考える時が来たと言える。(自動車ジャーナリスト=清水和夫)

EVのバッテリー性能などが注目されがちだが、電動化の本質は「巡り」のデザインにある

バッテリーEVの覇権争いでもっとも分かりやすい差別化として、大きなバッテリーとパワフルなモーターで、従来のエンジン車では果たせないような加速性能を繰り広げている。

こうした電動化時代の「パワーウォーズ」は市場にインパクトを与えているが、スペック競争の裏側に潜む「資源」という問題は放置されたままだ。

資源を回収する現場ではより深刻な問題が浮上している。例えばモーターに利用される磁石の原料となるレアアースの回収問題だ。使い終えた後の磁石をいかに回収し、再利用にいたる「静脈」のプロセスをいかに設計するかという課題である。

EVだけでなくハイブリットにも使われるモーターは年々その量が増している。磁石を例にするなら、ネオジムをはじめとするレアアースへの依存が高く、地政学的リスクを産業全体の急所へと変質させている。

この資源制約に対し、日本のメーカーは極めて現実的な、言い換えれば「職人的な」アプローチを取っている。トヨタやホンダが志向するのは、単なる高出力化ではない。彼らが目指すのは、モーターを小型化し、高回転・高効率で回すことで、磁石の使用量そのものを削ぎ落とす「引き算」の設計である。

日産がアリアで挑んだ「無磁石(巻線界磁形)モーター」は、脱レアアースの理想を体現した。しかし、そこには物理的なトレードオフが存在する。永久磁石を使わない分、サイズは肥大化し、冷却や制御の難易度も跳ね上がる。

電動車の本質は「巡り」のデザイン
■欧州のバッテリー規則、高コストに
■日本のリサイクル体制に決定的な不備も

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shimizukazuo

清水 和夫(自動車ジャーナリスト)

武蔵工業大学電子通信工学卒、1981年からプロのレースドライバーに転向、1988年本格的なジャーナリスト活動開始、日本自動車ジャーナリスト協会会員(AJAJ)、日本科学技術ジャーナリスト会議会員(JASTJ)、著書・共著に『クルマ安全学のすすめ』『燃料電池とはなにか』『ITSの思想』『ディーゼルこそが、地球を救う』などがある。

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