記事のポイント
- トヨタ自動車が人気デザイナーと組みアップサイクルブランドを立ち上げた
- レクサスのシートに使った高品質な牛革レザー廃材を用いてバッグにした
- 価格は9万円台、担当者は「アップサイクルにプレミアムを宿す」と意気込む
トヨタ自動車は9月19日、都内で会見を開き、Z世代の人気デザイナーと組んでアップサイクルブランドを立ち上げたと発表した。レクサスのシートに使った高品質な牛革のレザー廃材を用いてバッグにした。価格は9万円台、同社の担当者は「アップサイクルにプレミアムを宿す挑戦だ」と意気込む。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)

「環境配慮やアップサイクルを購入の動機にしてもらうのではなく、アイテムそのものに魅力を感じてもらえるものを目指した」――。会見に登壇した、トヨタアップサイクルプロジェクトの中村慶至・オーナーはそう語った。
同社は、2021年春からトヨタアップサイクルプロジェクトを立ち上げ、自動車製造の過程で生じるリユース・リサイクルが難しい廃材の商品化に取り組んできた。これまでに、シートベルトやシート本革をアウトドアギアやステーショナリーに変えてきた。
このほど同プロジェクトの活動の一環として、新ブランド「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE(ツギクラフト バイ トヨタアップサイクル、以下ツギ)」を立ち上げた。ブランド名の「ツギ」には、「継ぐ」「繋ぐ」「次の未来へ」という3つの意味を込めた。

特徴は、「プレミアム」を掲げた点にある。一般的に、アップサイクルブランドは環境性やカジュアルさをアピールするものが多いが、同ブランドは「プレミアムアップサイクル」を打ち出した。
■あえて継ぎ目を目立たせたデザインに
ツギで展開するバッグは、山形県の工場で廃材になるレクサスのレザー廃材を活用した。廃材をつなぎ合わせパッチワークのようにデザインした。この工程には高度な職人技術が必要で、多くの試作を経て完成したという。

デザインを手掛けたのは、Z世代のデザイナーである一法師拓門(いっぽうし・たくと)氏だ。一法師氏は、国内外のラグジュアリーブランドのデザイナーとして活躍した後に独立し、現在はグラフィックデザイナー/クリエイティブディレクターとして活動する。
一法師氏は、パッチワークのようなデザインにした意図をこう話した。「最初は、なるべく継ぎ目が見えないようにして、プレミアム感を出そうと考えていた。ただし、日本の繊細な職人技術を生かすには、あえて継ぎ目を目立たせるデザインにすることで、おしゃれに昇華できると思った」と話す。
日本の縫製職人が持つ細かな手仕事と同社が培ってきた工業製品の生産ノウハウを融合させたものになるが、完成までには多くの壁があったという。
一法師氏とともにデザインを担当した、同社カラー&感性デザイン部アドバンスドCMFXデザイングループの加藤舞グループマネージャーは、「アップサイクルは、素材が整理できた状態から製造するのではなく、不均一な廃材から作るので、これまで当社が培った技術とはまったく異なる技術が求められた。ゼロから取り組まないといけなかったので多くの壁にぶつかった」と振り返った。
■「エシカルブランドを次のステージへ引き上げる」
ツギのバッグは9万円台と、アップサイクル製品にしては高価格帯だ。銀座三越や東急百貨店などの商業施設でエシカルキャンペーンをプロデュースしてきた、エシカルディレクターの坂口真生氏は、「エシカルブランドを次のステージへ引き上げるマイルストーンになる」と指摘した。

「アップサイクルブランドと比べると価格は高いが、高品質な素材を使ったハイブランドと比較すると手頃とも言える。アフォータブルなバッグは流行っているので、そのトレンドにも合っている」
ツギのバッグは6種類あり、9月19日から30日まで代官山蔦屋書店でポップアップを展開する。トヨタアップサイクルのECサイトでも購入できる。バッグはどの種類も数量限定で販売する。
売上目標は設定していないが、消費者からの反応などを見て、この事業の継続を判断するという。トヨタアップサイクルプロジェクトの中村・オーナーは、「短期的に終わると意味がない。アップサイクルの取り組みは、いかに持続させるかが重要だ。一年でも長く続けていきたい」と話した。