TOTO田村社長「快適なトイレで健康にも貢献したい」

記事のポイント


  1. TOTOは、トイレなどの水まわり領域で、革新的な商品を生み出してきた
  2. 「親切が第一」という創業の精神のもと、水問題の解決に取り組んでいる
  3. 田村信也社長は、いかに企業価値の向上へとつなげていくのかを語った

TOTOは、トイレなどの水まわり領域で、革新的な商品を生み出してきた。「親切が第一」という創業の精神のもと、水問題の解決に取り組んでいる。田村信也社長は、いかに企業価値の向上へとつなげていくのかを語った。(聞き手=オルタナ輪番編集長・吉田広子、経済ジャーナリスト・海藤秀満)

TOTOの田村信也社長(撮影・海藤秀満)

田村信也
代表取締役 社長執行役員

1991年、TOTO入社。ウォシュレット生産本部 企画部長、ベトナムや米国の現地法人社長を歴任し、2019年取締役常務執行役員。24年専務執行役員を経て25年4月社長就任。福岡県出身。

「水洗トイレ」の普及で清潔さと快適さを実現

――TOTOのサステナビリティ経営の考え方について教えてください。

当社は水まわりの商品を取り扱っています。人々が生活する上で水に接する時間は重要で、「気持ちよく、きれいに」という感覚を意識します。しかしながら、そうした要求を達成するためにはエネルギーを必要とします。そのエネルギーをいかに極小化していけるか追求してきたことが、TOTOの進化の歴史だと思います。

創業の頃は、トイレを例にとっても、「少しでもきれいに」という要求から水洗トイレが始まりました。当時のトイレは母家から離れた場所に設置され、不潔なモノ扱いでもありました。

それを少しでも清潔に使いたい、という要望に応え、さらに「気持ちよく」という感性が入り、節水・省エネの課題にも取り組みながら、全ての条件を成り立たせながら発展してきたというのがTOTOの108年の歴史なのです。

TOTOのサステナビリティ経営の根幹は、まさにこうした課題を克服して進化を続けてきたことだと思いますし、これからも永久に進化を続けていくと確信しています。

これまでの「きれいに、快適に、省エネ」というキーワードに加えて、今後は「健康」というキーワードが加わります。快適なあまり、トイレの滞在時間も長くなっています。トイレで過ごす時間を利用して、健康管理に役立つことなど、新たな役割があると思います。その実現のためには相反する条件の克服など、常に高いレベルで問題を解決して両立させることです。

創業の精神である「親切が第一」という考えに基づき、社会の役に立つべく活動し、これからも進化していくことがサステナビリティ経営だと思います。

――近代日本において、西洋式の水洗トイレを日本の陶器技術で広め、日本の生活を支えてきたてきた自負を感じますか

それはもちろん自負しています。水洗トイレの導入は、当初は「何だこれは」という激震が走ったと思います。水洗トイレの「清潔」に加えて、「ウォシュレット」の登場で「快適」という概念が生まれました。我が社だけでなく、同業企業とともに日本のトイレ業界を牽引してきた自負はあります。

――TOTOの温水洗浄便座「ウォシュレット」は1980年に発売され、累計出荷台数6000万台以上のヒット商品に。田村社長は1991年の入社以降、ウォシュレット事業に携わりました。こうした付加価値のある商品提供で、新たな経済価値を生み出しましたか。

エンジニアとして開発から販売、事業戦略まで行いました。今から20年ほど前、まだウォシュレットがそんなに普及していない頃は「電気を使ってもったいない」贅沢品という意見もありました。商品の普及のために、便座をいかに少ない電気で温めるか、また洗浄の水をいかに節水するか。

環境負荷を意識するとともに、顧客心理の抵抗払拭のために尽力しました。さらに、新商品との交換でのリサイクル対処など、同時に解決しなければならない課題が山積していました。

■トイレの普及が犯罪の予防にも

――TOTOは「経済的成長」に加えて、地球規模での社会的課題の解決による「社会的・環境価値向上」との両軸の実現を目指していますが。

グローバルな事業では、先進国と開発途上国とで役目が違います。トイレが普及している先進国の米国や中国では、ビデシートとも呼ばれるウォシュレットは受け入れられています。こうした地域では商品の環境負荷に対する注目が集まります。より高いレベルでの競争になります。

逆に、まだトイレが普及していない地域では、環境と犯罪という課題があります。これらの地域では家の中にトイレが存在しないので、伝染病の心配があります。また、女性が暗くなってから屋外のトイレを使う環境では、治安や犯罪の心配もあります。「1家に1つトイレがあれば」という社会的課題の解決がまず先決で、その次に「きれいに、気持ちよく」というレベルを上げる段階になります。

国や地域のトイレ普及状況に応じた提案が必要になります。

――中国市場では競争が激しくなっているようですが。

中国でトイレが普及するにつれ、故障やトラブル時に対応できるトータルサービスのブランドも増えましたが、限定されたサービスに特化したローカルブランドでも受け入れられる環境ができて、顧客の選択肢も広がりました。その結果、市場のおよそ半分を中級市場ブランドが占めるようになりました。

そうした中で、中高級・高級市場をターゲットにしたTOTOを選んでくれた顧客は「TOTOの商品と長く付き合って分かったが、サービスの1つ1つがちゃんとしている。ブランドを変える気にならない」「違うブランド製品を使っていたが、TOTO製品を使って良さがわかったよ」などと当社ブランドを選んでくれる理由が明確になっています。こうした顧客に提供しなくてはならない価値もはっきり掴んでいます。

――中国では不動産市場にも変調があるようですが、TOTOへの影響は。

 中国市場では、住宅市場はマンション(集合住宅)がどん底の状態で、完成したマンションの在庫が3年分売れ残っている状況です。これとは逆に、オフィスやホテルと個別のリフォームの業界は動いています。その中で、ホテルの動きがいいです。コロナ禍後に人が動き出し、改装需要と新築需要があります。オフィスも、コロナでの在宅勤務が終わり、改装需要があります。洗面台でも、非接触の自動蛇口製品への交換が中心です。

――国内市場の見通しはどうですか。

国内の新築マンションは高騰しているので、街中の利便性がいい中古マンションのリフォームと戸建住宅のリフォーム需要に注目しています。新築の戸建住宅も1階建物件が増えているので、トイレの数が減り、逆境ではあります。

(この続きは)
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海藤 秀満

産経新聞を経て日経映像で30年以上にわたり株式市場および上場企業の取材・アナリスト業務に携わる。テレビ東京、日経CNBC、NHK WORLD-JAPANの経済情報番組のプロデューサーを数多く務めた。

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キーワード: #サステナビリティ

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