金融庁幹部「プライム上場維持したいなら責任を果たすべき」

記事のポイント


  1. 金融庁でサステナブルファイナンスを推進する池田賢志CSFOが取材に応じた
  2. 池田氏はプライム上場企業の非財務の取り組みが進まないことに危機感を示す
  3. 「プライム上場維持したいなら責任を果たすべき、でなければ市場変更を」とした

金融庁の池田賢志CSFOはオルタナの取材に対して、東証プライム上場企業でもサステナビリティに対する取り組みが足りなければ「上場先をプライム市場から変更するのが筋ではないか」と強い口調で語った。池田氏は「プライム上場を維持したいなら積極的に責任を果たすべきだ」と話した。(オルタナ編集長・森 摂、編集部・萩原 哲郎) 

池田 賢志(いけだ・さとし):
CSFO(チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー)
2019年3月、サステナブルファイナンスの推進に関する事項についての企画及び立案に参画し、関係事務に関し必要な調整を行うため、金融庁に「チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー(CSFO)」のポストが新設されたことに伴い、初代CSFOに就任。同職においては、民間金融における持続可能な開発目標(SDGs)との整合性向上や、事業者及び金融機関によるTCFD開示の推進などの課題に取り組むほか、IPSFトランジションファイナンスワークストリームの共同議長、「インパクト投資に関する勉強会」の副座長を務めるなど、サステナブルファイナンスに関する職務を幅広く所掌。 

■サステナ取り組み、プライム上場企業もまだら

――金融庁は2019年、CSFO(チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー)のポストを新設した。その理由とミッションは。 

2015年のパリ協定以降、金融界でも気候変動を中心にしたサステナビリティについて主要テーマとして取り組む機運が高まった。そのなかで金融庁としても17年ごろから何ができるかを議論し、18年12月に「金融庁とSDGs」と題した報告書をまとめた。 

グローバルでも動きがあり、EUは18年に「サステナブルファイナンス・アクションプラン」を打ち出した。金融庁としても取り組みを国内外に発信していく必要があり、CSFOというポストを新設した。 

CSFOの大きなミッションは3つある。一つはサステナブルファイナンスにおける国際的な議論のリードとルールメイク。日本での取り組みなどの対外発信、これらを通じて日本の金融界や産業界の競争力を確保していくことだ。 

こういった取り組みを進めていくことで日本の金融マーケットの競争力、ひいては産業界の競争力を高めていくと考えている。 

――池田CSFOは東証再編にも取り組んだ。東証プライム市場の上場企業を見渡すと、サステナ領域の取り組みに濃淡があり、なかにはサステナビリティレポートすら発行していない企業もある。 

企業が、東証プライム市場の定義に賛同してその市場区分を選ぶのが本来のあり方だ。とはいえ、プライム市場に求められている責任と、上場する企業の実際の取り組みにギャップが生じているのも事実だ。 

金融庁と日本取引所の両者は、プライム市場はグローバルな投資家と対話して企業価値向上を目指すマーケットだと定義した。しかし足元ではそうなっていないと感じる。 

私は、プライムの基準にまだ至っていない会社が奮起してくれることに期待している。

プライム市場の上場企業には、ESG投資家を含めた内外の投資家と対話をし、企業価値向上を図ることが求められる。それができないなら、基準や線引き以前の問題で、そもそも選択した市場が間違っていたということになる。

国内ではISSB開示基準を踏まえてSSBJ(サステナビリティ基準委員会)が開示基準を策定する予定だ。23年3月期からは有価証券報告書でのサステナビリティ情報についての記載欄が新設された。

プライム市場に所属している以上は、積極的に責任を果たしていってもらいたい。 

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萩原 哲郎(オルタナ編集部)

2014年から不動産業界専門新聞の記者職に従事。2022年オルタナ編集部に。

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