日鉄やJFEなど世界の鉄鋼22社の脱炭素を「見える化」

記事のポイント


  1. 国際気候NGOのスティールウォッチは「鉄鋼企業移行トラッカー」を公開した
  2. 12か国の鉄鋼22社の脱炭素化の進捗を、データ分析・比較するツールだ
  3. 排出量のほか、石炭依存度、グリーン鋼材の準備度、人や社会への影響が閲覧できる

国際気候NGOのスティールウォッチは14日、データ分析ツール「鉄鋼企業移行トラッカー」を公開した。日本製鉄やJFEスチールなど、12か国の鉄鋼メーカー22社の脱炭素化の進捗を「見える化」し、年次ごとや他社との比較・分析を可能にする。排出量、石炭への依存度、グリーン鋼材の準備度、人や社会への影響を、誰でも無料で閲覧できる。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

国際NGOは、鉄鋼メーカーの脱炭素の取り組みを可視化した

鉄鋼業界は世界のCO2排出量の約11%、日本のCO2排出量の約13%を占める。鉄鋼業界の排出量の9割を占めるのが、石炭を用いた高炉による鉄鋼生産だ。鉄鋼関連企業の多くは脱炭素計画を公表しているが、排出量の報告はかならずしも十分とはいえず、脱炭素の進捗状況をこれまで比較分析することには課題があった。

スティールウォッチのデータ分析ツールは、同NGOのサイト上にあり、誰でも無料で閲覧できる。企業が発行する報告書やグローバル・エネルギー・モニター(GEM)などの情報をもとに、各社の排出量、石炭への依存度、グリーン鋼材への準備度、人や社会への影響を示す。

各社ごとに時系列での推移が見られるほか、閲覧者が設定した企業間の比較もわかる。今後、原則年1回、定期的に更新していく方針だ。

トラッカーで確認できる世界の鉄鋼メーカーは、下記の22社だ。

日本製鉄(日本)、JFEスチール(日本)、アルセロール・ミッタル社(オランダ)、宝鋼集団(バオスティール、中国)、クリーブランドクリフス(米国)、ジェルダウ(ブラジル)、河北鋼鉄集団(HBIS、中国)、現代スチール(韓国)、JSWスチール(インド)、MMK(ロシア)、ムバラク鉄鋼(イラン)、NLMKグループ(ロシア)、ニューコア(米国)、オヤック(エルデミルグループ、トルコ)、ポスコ(韓国)、SSAB(スウェーデン)、Stegra(ステグラ、スウェーデン)、タタ・スチール(インド)、テルニウム(ルクセンブルク)、ティッセンクルップ(ドイツ)、Tosyali(トスヤル、トルコ)、USスチール(米国)

「鉄鋼企業移行トラッカー」はこちら

■企業とNGOの対話のツールにも

「トラッカーで示した企業とは、公開前に連絡を取り、レビューを依頼した。すべての企業から回答いただけてはいないが、その状況もトラッカーに表示してある」と、スティールウォッチの鉄鋼アナリストのロマン・スー氏は説明する。

「私たちは、純粋なデータ検証だけをテーマにしてはいない。選んだ指標や企業の戦略、今後の企業側のアクションプランについても議論できた。このツールによって、鉄鋼各社は、自社が同業他社と比べてどう見えるのかを確認できる。そして各社の指標改善に向けたインセンティブになることを期待する」(スー氏)

■ツールから見える鉄鋼業界の課題も

鉄鋼メーカーにとって、脱炭素化に向けた大きな課題は、石炭への依存度を下げていくことだが、排出量ならびに石炭を使用する高炉の数は、増加を続けているのが現状だ。

今回、トラッカーが対象とした鉄鋼メーカー22社のうち、大半は石炭の消費量を報告していないことが明らかになった。スティールウォッチは、「実際の石炭消費量は、トラッカーで示されている数字よりもはるかに多いと考えられる」との見方を示した。

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #脱炭素

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