記事のポイント
- 企業の情報開示が進むなかで長期目標の開示が求められている
- 後藤敏彦氏は長期目標は「必達目標ではない」と強調する
- 企業全体だけでなく部門ごとの長期目標策定も重要に
オルタナは12月17日、サステナ経営塾第21期下期第3回を開いた。第2講には、NPO法人日本サステナブル投資フォーラム理事・最高顧問の後藤敏彦氏が登壇し、「野心的な長期目標をどう設定するか」について講義した。講義レポートの全文は下記の通り。

・野心的な長期目標をどのように設定するか。設定するための軸としてトリプルボトムラインやESGというものがあります。さらに細分化すると環境ならエネルギーや水や廃棄物など、あるいはISO、欧州のESRSなどがあります。そのなかでのマテリアリティアセスメント、つまり重要な問題に対して会社がどう取り組むべきでしょうか。
・1972年のストックホルム国連人間環境会議以後、地球環境問題への取り組みがされてきました。企業の任意の情報開示が1990年代から始まり、現在では義務的開示になってきています。開示に力が注がれがちですが、開示は取り組みの結果や方向性を示すものです。つまり戦略や取り組みがあって初めて開示があります。企業や部門の戦略がどうあるべきかが一番問われるべきポイントになるわけです。
・現在、3つの課題があります。気候危機・生物多様性毀損・海洋汚染。グローバリゼーションの影、途上国での人権侵害、先進国での格差の拡大。各地の紛争。結果として自由貿易体制は大きく揺らぎ、更にはAIの進展による雇用の大変化の可能性もあります。これらの課題を前提として企業活動を考える必要があります。
・長期目標をつくるとき、多くは必達目標として策定されると思います。しかし「目標」と翻訳される「Goal」には「必達」という意味はふくまれていません。海外では「必達」という捉え方で目標を作っていないのです。
・中期、長期の期間設定は個別企業で異なりますが、重要なのはどういった「ありたい姿」にしたいのか、というビジョンが問われているということです。これはトップダウンでない限り策定は難しいです。さらに大企業の場合にはビジネスラインが複数あって、それぞれで中長期の展望も異なります。だからこそ部門ごとでもこうした長期ビジョンを考える必要があるわけです。
・現在の情報開示義務化の流れはTCFDから始まっています。金融安定理事会がタスクフォースをつくったわけですが、気候変動が金融のリスクであるとして金融業界は対応を考えなさいとG20から勧告を受けて作られたものです。情報開示の骨格はガバナンス・戦略・リスクマネジメント・指標と目標の4層構造で情報開示をするように定められています。
・長期目標のつくり方としては、フォアキャスティングアプローチとバックキャスティングアプローチの2つがあります。短期はフォアキャストで行うと思いますが、中長期になるとありたい姿を描いた上でそこに向けての道筋を描くというバックキャスティングという方法しかないと思います。



