記事のポイント
- 3月8日の「国際女性デー」は、国連がジェンダー平等を目指して定めた記念日だ
- 日本でも認知は広がっているが、地方では依然としてジェンダー格差が大きい
- 稲葉哲治さんに、地方のジェンダー格差との向き合い方について寄稿してもらった
3月8日の「国際女性デー」は、国連がジェンダー平等を目指して定めた記念日だ。日本でも認知は広がっているが、地方では依然としてジェンダー格差が大きい。北海道・中富良野町で男女共同参画の推進に取り組む稲葉哲治さんに、地方のジェンダー格差との向き合い方について寄稿してもらった。
■「地方女子」の生きづらさとは
私は現在、北海道・中富良野町で男女共同参画の推進に取り組んでいます。総務省の「地域活性化起業人」制度にもとづき、2024年10月から月の半分を中富良野町で暮らし、役場で勤務しています。
残りの半分は地元である東京・新宿に住み、企業向けのダイバーシティ研修やコンサルティング、女性の意思決定層を増やすための人材サービスに携わりつつ、エシカルをはじめとする社会活動にも従事しています。中富良野町という「地方」と、新宿という「都市」。対極的な環境での二拠点生活です。
地方のジェンダー格差が日本社会の大きな課題であることは知られおり、有意な取り組みも行われています。「地方女子」の生きづらさはメディアでも注目され、関連書籍の出版も続きます。私もそれらの過去事例を踏まえて中富良野町に赴任しました。しかしすぐに、自分の認識が大きくずれていたことを痛感し、自らの不明を恥じました。
地方と、地方都市や都市は違う。暮らしの前提が異なるのです。私が「地方のジェンダー格差解消」として認識していたものは、地元企業を有する地方都市の事例であり、過疎や消滅可能性に直面している「地方」のものではなかったのです。
町では、「満員電車とはどのようなものですか」「キャリアアップの意味が分からない」「賃金格差といわれても、農家だから」という声を耳にしました。中富良野町など多くの地方では、電車通勤は一般的ではありません。
都市部の人がイメージする「会社」は少なく、オフィスビルもありません。サードプレイスと呼べる場所も乏しいです。会社員という生き方を選ばない人も多く、農業などの一次産業や観光業に家族で従事しています。職住一体の暮らしが営まれています。消費よりも生産が生活の中心であり、自然の中で生きています。
■都心の格差解消施策は地方に合わない
都市の会社員を前提につくられて地方都市で取り組まれているジェンダー格差解消施策は、地方では実態に合わず、住民にとって実感を伴わない「上滑り」になりかねません。
北海道は都道府県別ジェンダーギャップ指数で最下位です。その背景には、自治体の約85%が過疎地域であり、人口の約24%がそこで暮らしているという構造があると私は考えます。全道人口約500万人のうち、40%にあたる約200万人が暮らす都市・札幌だけを見ていても、北海道全体のジェンダー格差は解消されません。人口流出・減少も止まらないでしょう。
地方の産業構造や自然環境、住民の生活習慣に目を向け、それに即した施策を講じなければ意味がありません。そう思いながらも、私は何に取り組めばいいか途方に暮れました。
転機となったのは、中富良野町・富良野市でNPO法人エフ・コレクティブが毎年開催している「ふらの女性サミット」でした。そこで実施したアンケートに、「義父からいろいろ言われることが気になり、思うように出かけられない」という声が寄せられました。
男性の干渉によって、女性が自分の意思で自由に出かけられない現実が、地方には存在しています。
その後、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター研究員の伊藤将人氏が、ジェンダーによる移動の格差を論じた『移動と階級』を刊行しました。私は強く共感し、地方においては女性が出かけられない、「移動の自由」に格差があることに焦点をあて始めました。
(この続きは)
■「行く場所がない」、移動にも格差
■定期映画上映会で出かける機会を

