記事のポイント
- 寒波・吹雪・熱波・竜巻・洪水が2026年2〜3月の米国を襲った
- 極渦の崩壊や寒気と暖気の衝突で季節の変わり目に極端な気象が集中する
- 被害は低所得層や有色人種に偏り、気候変動で社会的不平等が加速する
2026年2月から3月にかけて、米国各地で寒波やブリザード(激しい吹雪)、記録的熱波、竜巻、洪水が多発した。北極の温暖化による極渦の崩壊と、カナダからの寒気とメキシコ湾からの暖気がぶつかることで、季節の変わり目に極端な気象が集中する構造がある。こうした災害の被害は有色人種や低所得層に不公平に偏っており、気候変動によって既存の社会的不平等が加速している。(在テキサス編集委員・宮島謙二)

■ 寒波と猛暑が同居する異常
冬から春にかけて、全米各地で気象災害が相次いでいる。
1月下旬には、極渦の崩壊によって寒気が流入し、テキサスやフロリダまで降雪が及んだ。ニューヨークの路上では17人が低体温症で死亡し、大半がホームレスだった。
米海洋大気庁(NOAA)の分析によれば、2月下旬のブリザードは約1億1500万人に影響を及ぼした。東海岸のニュージャージー州では、ブリザードと1月以降に相次いだ暴風雨や厳しい寒さで少なくとも35人が死亡した。
一方、南部は異常な高気温が相次いだ。
2月26日には、テキサス州ファルコンダムで41.1℃を観測。米国における冬の観測史上最高気温を更新した。
NOAAによると、2月の米国の平均気温は、132年の観測史上4番目に暖かく、5つの州で最も暖かい2月になった。冬季全体でも過去2番目の高温だった。南部から西部、北西部にかけて、9州で冬季の平均気温が観測史上最高を記録した。

■もはや春ではない極端気象
3月中旬からはジェット気流の停滞が原因で高気圧が長期間同じ地域にとどまり、暖気が圧縮されることで高温になる「ヒートドーム」が南西部から西部を覆った。
アリゾナ州フェニックスでは8日間連続で38℃(華氏100度)超を記録した。3月19日はアリゾナ州マルティネス湖で3月の米国における観測史上最高となる43.3℃を記録したが、翌20日にはアリゾナ州とカリフォルニア州の4地点で44.4℃が観測された。これはもはや春ではない。
極端な気象現象への気候変動の寄与を分析するワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)は、この熱波による異常高温を「人為的気候変動なしでは事実上あり得ない」と結論づけた。
米国の春は、極端な気象現象が最も発生する時期だ。北極の成層圏の温暖化によって、極渦が崩壊して中緯度地域まで寒気が下りやすくなる。その寒気にメキシコ湾から北上する暖気がぶつかると、極端な気象現象が発生する可能性が高まる。
■最高強度の竜巻に、1200件超える強風被害
3月10日には、インディアナ州東部で、最高強度の竜巻が発生した。竜巻の強度を示す改良藤田スケールで、最高のEF5(風速毎秒90メートル)の竜巻の発生したのは2013年以来2例目だ。この竜巻により、2人が死亡した。
3月に報告された竜巻は暫定で161件、強風による被害は1272件に達した。
■ハワイも20年に1度の大洪水に
ハワイ州では、3月に2度のコナ低気圧(寒気を伴う動きが遅い低気圧)に見舞われた。
オアフ島では一部で760mmを超える降水量を観測した。救助隊は236人以上を救出した。
ジョシュ・グリーン州知事は、被害額が10億ドル(約1600億円)を超えるとの見通しを示し、20年ぶりの大洪水と表明した。
■山火事被害は「三重県」と同じ規模、背景には深刻な干ばつ
干ばつも深刻だ。3月中旬時点で米国本土の約55%が干ばつ状態にある。
全米省庁合同火災センターによると、3月20日までに過去10年で最多となる1万2979件の山火事が発生し、同期間の平均の約2.5倍にあたる5727平方キロメートルが焼失した。
これは、三重県とほぼ同じ面積だ。西部の積雪は約40年ぶりの低水準で、春から夏にかけての水不足と山火事の連鎖が懸念される。
■ 弱者に集中する気候災害の打撃
EPA(米環境保護庁)の報告によると、気候変動の影響を受けた熱波や洪水などの最も深刻な被害は、その影響への準備力と回復のためのリソースを持たないコミュニティに集中している。
WWAの分析も、極端な暑さに慣れていない人々の健康リスクを警告した。
ニューヨークの寒波で死亡した17人の多くはホームレスだった。ホームレスの支援団体は、「数十年にわたる制度的失敗を緊急的な対応だけで元に戻すことはできない」と批判した。
気候災害は自然現象ではない。社会の構造に根差す問題だ。温室効果ガスの排出量削減と同時に、準備力と回復力の公平な配分が問われている。


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