「国連の人権システムが存続の危機」と国際NGOが報告書

記事のポイント


  1. 国際人権NGOは、各国政府が国連の人権活動予算を裏で削減している実態を明らかにした
  2. 報告書は、中国とロシアが主導して人権予算削減を進めていると指摘
  3. 国連の人権システムが「存続の危機」に直面していると警鐘を鳴らす

国連人権理事会を長年監視してきた国際NGO「ISHR(国際人権サービス)」(本部スイス・ジュネーブ)は、各国政府が国連の人権活動予算を裏で削減している実態を初めて明らかにした。報告書は、中国とロシアが主導して人権予算削減を進めていると指摘。国連の人権システムが「存続の危機」に直面していると警鐘を鳴らす。(オルタナ輪番編集長=吉田広子)

ISHRの報告書「Budget Battles at the UN」は、2019~2024年の国連内部文書や関係者への取材をもとに、中国とロシアが国連総会第5委員会や行政予算諮問委員会で影響力を拡大し、人権予算を削減する動きを主導してきたと指摘した。中国はG77諸国に対して「効率化」の名目で削減を正当化し、国連内での影響力を強めている。

さらに、米国による会費支払い停止と遅延が追い打ちをかけ、国連全体の流動性危機が深刻化している。2025年10月時点で、加盟193カ国のうち72%しか会費を全額納付しておらず、OHCHRの実質予算は2024年に13%、2025年前半には27%減少した。

ISHRは「中国、ロシア、米国の行動が人権保護の根幹を揺るがしている」と警鐘を鳴らし、加盟国に対し、拠出金の全額・期限内支払い、OHCHRへの任意拠出拡大、ACABQ改革、人権関連予算削減への反対を呼びかけた。

yoshida

吉田 広子(オルタナ輪番編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。2025年4月から現職。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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