今年7月に「自然(再生可能)エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)」がスタートするのを前に、経産省の「調達価格等算定委員会」で審議が山場を迎えている。太陽光、風力、地熱、小水力、バイオマスの5分野についてそれぞれ業界から出た希望価格を巡って、サヤ当てが続く。
バイオマス分野においては、発電側が「未利用木質バイオマス」発電について、林地残材などの調達に費用がかかるとして、1キロワット時当たり31.8円の買い取りを希望している。
それに対して、自然エネルギー財団(孫正義会長)は、高めの価格設定は有用木材の無駄な燃焼や非効率な林業の温存を招きかねないと懸念。大規模施設の場合は20~25円、約2年で林業側の体制が整うと想定して3年目以降は20円以下という低めの価格提案を含む「FIT制度における木質系バイオマス発電に係る提言」を発表していた。
持続的な森林活用を目指す同提言では、地域還元型の中小規模施設の普及を図るために1000キロワット以下の施設でのみ当初2年は30~35円という高めの価格を示していた。
NPO法人日本の森バイオマスネットワーク(宮城県栗駒市)の佐々木豊志理事長は、「『未利用木材』の木質バイオマス発電の買い取り価格が高めに設定されると、『木を切って燃やせばもうかる』と森林の皆伐が横行し、森林が維持できない」と指摘する。最近では、九州を中心に、皆伐されて再植林されず、ハゲ山状態になった森林が増えているとの報告もある。
森林資源は建築資材や住宅建材に使われる限りはCO2が固定され続けるが、燃やしてしまえば再びCO2が大気中に戻る。温室効果ガス抑制の観点からも、木質バイオマス発電の急伸長を懸念する専門家も多い。
25日にまとまった未利用木材を使った木質バイオマス発電の買い取り価格の委員長案は、1キロワット時32円と高めで、施設規模も考慮しないものだった。買い取り価格は、委員会などの意見を参考にして経済産業大臣が決定する。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)