[書評]脈々と続いた動物たちの営みを脅かすもの

地球の公転とともに巡りゆく季節に合わせて、より餌の豊富な地域へと大移動をくり返す動物たち。そのダイナミックな生きざまを追体験できる絵本『北をめざして ~動物たちの大旅行』が出版された。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)

『北をめざして ~動物たちの大旅行』(ニック・ドーソン作、福音館書店刊)
『北をめざして ~動物たちの大旅行』(ニック・ドーソン作、福音館書店刊)

英国のイラストレーター、パトリック・ベンソンが描く動物たちが、いきいきと海を泳ぎ、空を飛び、大地を走る。180種もの動物が一斉に移動していく先には、短い春に生命が一気に花開く北極がある。

小学生でも読める絵本だが、大人も、厳しい野生動物の世界が同時進行で今この地球上にあることに改めて気付かされる。冷暖房も火も冷蔵庫もなく、食い食われながら、体ひとつで適温帯を求めて移動し続ける動物たちの一生は、過酷だが美しい。

本作が初の翻訳出版となる共同通信社の井田徹治記者が訳した。井田氏は解説文で、北極が世界で最も気候変動の影響を受けやすく、2050年に氷が消える可能性もあることを紹介。現状を変えることがホッキョクグマのみならず「人間のためにも大切」だと読者に伝えている。

■『北をめざして ~動物たちの大旅行』(ニック・ドーソン作、福音館書店刊)
http://www.amazon.co.jp/dp/4834081826

■井田徹治記者の記事はこちらでも掲載しています。
http://www.alterna.co.jp/author/ida_tetsuji

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瀬戸内 千代

オルタナ編集委員、海洋ジャーナリスト。雑誌オルタナ連載「漁業トピックス」を担当。学生時代に海洋動物生態学を専攻し、出版社勤務を経て2007年からフリーランスの編集ライターとして独立。編集協力に東京都市大学環境学部編『BLUE EARTH COLLEGE-ようこそ、地球経済大学へ。』、化学同人社『「森の演出家」がつなぐ森と人』など。

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