熊本地震、味の素が「食」で生活再建を後押し

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4月14日で熊本地震から1年が経った。応急仮設住宅と賃貸住宅を借り上げる「みなし仮設住宅」には3月末時点で4万4670人が入居している。被災者の生活再建は進んでいるものの、住民の不安は尽きず、課題は多い。味の素は、東日本大震災での学びを生かしながら、食を通じた復興支援に力を注ぐ。(オルタナ編集部=吉田広子)

2016年11月、熊本県内の避難所は閉鎖し、避難者数はゼロになった。一方で、応急仮設住宅の入居者数は1万985 人(1479戸)、みなし仮設住宅の入居者数は3万3685人(1万4621戸)に上り、合わせて4万4670人が仮設住宅での生活を続けている。

総務省が発表した「人口移動報告」(2016年)によると、熊本県は6791人の「転出超」となり、2015年より2858人増え、人口流出が続く。被害が大きかった熊本市は1540人の「転出超過」となり、2015年の3倍以上に達した。南阿蘇村の人口減少率は、3.7%と県内で最も高い。

■孤立に不安を抱える熊本の住民

3月13日に開かれた「熊本地震支援活動報告会―今求められる支援のあり方」で、熊本県立大学環境共生学部居住環境学科の柴田祐教授は、被災者がどのような不安を抱えているかを説明した。

住民からは、「集落のみんなと離れて暮らしたくない」「移転による孤立の不安」といった生活の不安から、「断層周辺に住みたくない」「危険地域の外に出たい」「二重ローン」「農業所得の減少」など、環境や経済的な不安の声が挙がっているという。

熊本県は、被災15市町村に「地域支え合いセンター」を設置し、被災者の見守り活動を行っている。センターの運営は主に各市町村の社会福祉協議会が担う。センターでは、「生活支援相談員」などを配置して、仮設住宅に住む人、在宅の被災者などを巡回訪問し、専門機関などと連携して困りごとに対応する。

「震災直後は気を張って生活しているが、時間が経つにつれ、疲れや不安感が出てくる。特にみなし仮設の場合、ばらばらに点在するため、状況が見えづらい。支援が行き届きにくく、孤立化しやすい」

こう話すのは、阿蘇市地域支え合いセンター主任生活支援相談員の佐藤かおりさんだ。相談員として毎日5世帯ほどを訪問しているという。仮設住宅に移り住んだ人たちは、これまでとは違った環境で引きこもりがちになってしまうことが多いという。コミュニケーションが少なくなり、モノ忘れがひどくなってしまうこともある。

■東日本大震災の学びを生かした簡単レシピ

こうしたなかで、生活再建の一助になろうと、「食」を通じた復興支援を進めるのが味の素だ。2016年11月から2017年3月までに、地域支え合いセンターを通じて、みなしを含めた仮設住宅の住民を対象に「楽チ~ンレシピ」セットを5590セット届けた。専用の袋には、レシピのほか、調味料の味の素、ほんだしがセットされている。

味の素CSR部(当時)の大和田梨奈さんは「企業としてできることは限られているが、少しでも役に立ちたかった。事業リソースを活用しながら何ができるか。地域の声を聞き、押しつけにならないように支援策を考えた」と話す。

電子レンジで簡単に作れる肉じゃがのレシピ

「楽チ~ンレシピ」は、仮設住宅のせまいキッチンや、料理をする気持ちになれない状態を想定し、だれでも簡単に作りやすい工夫がなされている。高齢者にも分かりやすいように、手順を写真や図で大きく表示した。ここには、東日本大震災の復興支援で得た知見が生きているという。

肉じゃがのレシピは、じゃがいもと玉ねぎを一口大に切り、電子レンジで5分加熱する。そこに牛肉の薄切りをのせ、調味料を加える。さらに電子レンジで8分加熱したら完成だ。熊本県民の好みに合わせて甘めの味付けにしているという。ビニール袋で混ぜるだけの「キャベツの梅肉味噌あえ」といったレシピもある。

計量スプーンの代用法として「大さじ1杯はペットボトルのふた2杯分とほぼ同じ」「小さじ1杯は日本酒や焼酎の紙パックのふた1杯」といった情報も紹介している。

佐藤さんからも、「『楽チ~ンレシピ』セットを持って訪問すると、話すきっかけにもなり、実用的で喜ばれる」と好評だ。

■コーヒーで住民が集まる場づくり

味の素は、地域支え合いセンターの協力のもと、「楽チ~ンレシピ」セットを届けた

味の素グループは東日本大震災発生後、「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」を立ち上げ、仮設住宅で「健康・栄養セミナー」を1800回以上開いてきた。

この経験から、仮設住宅では健康・栄養面の問題だけではなく、コミュニティーの希薄化という課題が見えてきた。

「仮設住宅への移転後、生活パターンが大きく変化し、孤立化する高齢者もいると聞く。料理のハードルをできるだけ下げて、作る、食べるといったところから、自立への手助けができれば」(大和田さん)

味の素ゼネラルフーヅ(AGF)が開催するコーヒー教室も評判だ。AGFは2016年11月から益城町、阿蘇市でコーヒー教室を実施。AGF社員からコーヒーについて学んだり、同社製品をみんなで飲んだりする即席のカフェだ。これまでに8回開催し、仮設住宅の住民が集まる場づくりに取り組んできた。

佐藤さんは「以前は趣味で野菜づくりをしていた人も、仮設住宅に移り住み、畑がなくなり、体を動かす機会が減ってしまった。コーヒー教室は住民が外に出る機会につながっている。コーヒーを囲んでほっとし、会話も生まれる。住民が集まることで安否確認にもなる」と話す。

熊本県は、災害公営住宅が間に合わない場合などを想定して、原則2年と定められている仮設住宅の入居期間を延長する考えを示している。佐藤さんは、「生活を『補助』する存在として、住民自らが健康づくり、地域づくりをしていけるようなきっかけをつくっていきたい」と力を込めた。

2017年4月18日(火)11:32

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