台風被災乗り越え、岩泉を支えたCSVの絆

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昨年の台風10号豪雨により、大きな被害が出た岩手県岩泉町。復旧作業が今も続いている中、町最大の観光スポット龍泉洞の再開に続き、5月15日、岩泉乳業と日本ゼトックの共同開発による新製品「龍泉洞の潤いジェル」が発売された。

■「龍泉洞の化粧水」発売から1年

龍泉洞シンボル、神秘的な「ドラゴン・ブルー」の地底湖

工場被災で、岩泉ヨーグルトが全国の店頭から消えて約8カ月。8月の製造再開に向け、今も工事が急ピッチで行われ、岩泉乳業のFacebookページには全国のファンから販売再開を待ちわびる多数の応援メッセージが寄せられている。工場再建のさなか、被災後1年に満たない期間での新製品発表という快挙の裏には、「岩泉の復興につなげたい」という岩泉乳業山下欽也代表取締役社長をはじめとする社員の強い想いと、昨年5月の龍泉洞の化粧水発売以来、「製造委託先」という言葉以上のつながりが生まれた日本ゼトックの協力があった。

日本ゼトックは東北復興応援を目的に、同社の技術力で地場の素材を原料とした化粧品を製造し、それを地元企業が販売して地域活性化へとつなげる取組を推進している。「いわて三陸 復興のかけ橋プロジェクト」を通じて岩泉乳業、岩泉産業開発との共同開発に至り、名水として知られる岩手県岩泉町にある龍泉洞の湧き水を使用、昨年の「龍泉洞の化粧水」発売につながった。

昨年6月の化粧水発売の際、日本ゼトックの社員は岩泉で行われた工場まつりに東京から駆けつけ、岩泉乳業、岩泉産業開発の社員と共に化粧水を販売。岩泉町民の龍泉洞や地域に対する思いの深さに直に触れ、開発当初から携わった日本ゼトックマーケティング企画開発部大谷浩淑部長も「地域に愛される商品」としての強い手応えを感じていた。実際、発売1ヶ月ほどで龍泉洞の化粧水は品薄状態に。首都圏からも問合せが入る人気となった。

■化粧水が支えた「社員の雇用」

龍泉洞のように人々に愛される商品を目指す「龍泉洞の潤いジェル」

発売2カ月後、台風10号による豪雨が岩手を襲った。岩泉町の全域が被災。岩泉乳業もすべての工場操業ができない状態に。工場まつりが開催され多くの町民で賑わった広場も土砂で埋まった。壊滅的な被害を前にしながらも、岩泉乳業山下社長は「1年以内の工場再開」と「社員の継続雇用」を決意する。

岩泉の主要企業である岩泉乳業、岩泉産業開発のほとんどすべての商品が出荷できない状況だったが、龍泉洞の化粧水については日本ゼトックに製造を委託していたこと、原料となる龍泉洞の湧き水も、台風の直前に日本ゼトックに向け出荷されていたことで、被災後も製造・販売を継続することができた。

発売と同時に好評で品薄状態にあったところに、「応援したい」という「岩泉サポーター」の存在もあり、岩手県内はもちろん、全国から問合せや注文が相次ぎ、これまでに約6万本を売り上げた。化粧水の市場は、大手が作っても一品1年10万本で大ヒット。全国展開をしていない、販路を限っての「6万本」は驚異的な数字。この売り上げが「雇用の柱」となった。

■「地域」復活へ向けた共創の絆

日本ゼトックの社員に被災の様子を説明する岩泉乳業・下道副社長

「こんな状況だからこそ、第二弾を少しでも早く発売し、岩泉の人たちに元気を届けたい」(山下社長)。化粧水の発売当初から「第二弾」の計画はあった。購入した女性たちからの要望もあった。しかしながら岩泉乳業の被災に、計画の延期は当然という状況での、社長の決断。「地域に支えられてきた」企業としての決意だった。この言葉に、日本ゼトックも「我々みんなで活性化していこう」と精力的にバックアップをおこない、1年未満での開発にこぎつけた。

開発期間は短いが、製品に妥協は無い。岩泉乳業の要望を形にするべく、意見を聞きながら日本ゼトックの社員が開発を担当した。「龍泉洞の水はミネラルが豊富。その特性を活かして、お肌に水分を閉じ込めて逃さないように工夫した」(日本ゼトック開発研究部中谷菜穂)。岩泉乳業大澤澄子専務も「みずみずしいぷるんとした感触に仕上げた。潤いを逃がさない、肌なじみに優れた、べたつかないしっとり感が特徴」と胸をはる。容器の色も龍泉洞を象徴する「ドラゴン・ブルー」の色の再現にこだわった。

山下社長の「まずは県民の皆さんに商品の魅力を知っていただき、岩手ならではの特産品として長く愛していただきたい。ゆくゆくは県外にもアピールし、復興の力になればうれしい」との言葉に、日本ゼトック大谷部長も「会社として今後も継続して関わっていきたい」と応じた。

東日本大震災をきっかけに始まったCSVのつながりが「龍泉洞の化粧水」を産み、その製品が台風被災で再び危機に陥った岩泉の希望となり、社員たちの想いとなって今回の開発を加速させた。首都圏と地方の距離を越え、異なる会社の社員同士が協力して被災を乗り越え、共創の絆を深めながら前に進む。

このような絆と交流が継続的に復興を、ひいては日本経済を支えていくのではないだろうか。

岩泉乳業によると、ヨーグルトなどの製造再開に向けて建設中の新工場は8月完成予定。製造ラインの調整や試作等を重ね10月から商品販売を始める計画だ。「龍泉洞の潤いジェル」は岩泉乳業のホームページで注文を受け付けているほか、岩泉町内の道の駅などで販売されている。

過去記事:岩手「龍泉洞の化粧水」が誕生、地域資源の生かし方

◆いわて三陸復興のかけ橋「復興トピックス」

一般社団法人 RCF
2011年4月、震災復興のための調査を行う団体として発足。現在は復興事業の立案・関係者間の調整を担う「復興コーディネーター」集団として活動。代表理事は藤沢烈。活動例として、2015年度はいわて未来づくり機構を母体とする「いわて三陸 復興のかけ橋プロジェクト」を岩手県より受託し、岩手県内各地と県外企業・団体の復興支援マッチングを推進している。

2017年6月20日(火)23:59

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