「100%自然エネ」の時代を先取りした屋久島

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「もののけ姫の森」とも呼ばれる苔むす白谷雲水峡の森も豊富な水を貯える

自然エネルギーだけで事業経営を行うことを目指す企業や国、地域が増える今、国内にもすでに50年以上前から発送電分離を行い、自然エネだけで電力をまかなってきた地域がある。世界遺産の島「屋久島」である。その背景には島が持つ豊かな水力だけでなく、島民が自然と共生して、それを守ろうとした歴史と島民気質があった。(環境ライター 箕輪弥生)

島で作る電気が生む地域循環型経済

巨大な花崗岩でV字型に形成された、落差60mの千尋の滝は水のパワーを実感できる

年間降水量8000mm、日本一雨が降ると言われる屋久島は、2千メートル級の山もあり、水量、落差共に大きい豊かな水力資源を抱える島だ。この豊富な水資源を活かして、昭和35年から島で使う電力のほぼすべてを水力で発電し、自給している。

発電や配電を行うのも地元の企業や協同組合が中心となり、大手電力会社に頼らない独立した発電、送電システムを築いている。今の日本が抱える課題の、発送電分離、自律分散型の電源をほぼ60年前から実現している島なのである。

島では鹿児島県のバックアップもあってEV(電気自動車)の普及にも力を入れている。現在、島には約200台のEVがあり普及率は全国の10倍だという。自然エネで走るEVが普及している場所は国内でも屋久島だけだろう。

発電を担うのは、主に屋久島電工(東京・中央)という民間企業がもつ3基の水力発電所(安房川第一、第二、千尋滝)と現在は九電が管理する小規模の嶽之川水力発電所による。これにより約6万KWhを発電し、電力は同社の炭化ケイ素工場に利用されるほか、九州経済産業局の認可を受け、総発電量の約2~2.5割の余剰電力を島民が使っている。

鯖節の加工のために大正15年から発電を行った嶽野川発電所で使われていた小水力発電機

同社は渇水時の島内への電力供給を維持するため火力発電所を併設するが、あくまでもバックアップ用で、水が足りなくて火力発電を使うことはほとんどないという。火力発電と原子力発電をベースロード電源としている国の政策とは全く逆である。当然だが、化石燃料を使った電気を購入するのに比べ、燃料費はかからず、その分の費用が地域外に流出しない。

配電組織は発電会社とは異なる。島を4つの地域に分け、農協や協同組合などの3組合と九州電力の1社が、屋久島電工が発電した電気を配電する。送配電網もそれぞれの組織が持ち、保守点検なども地元の電気事業者が請負い、利益が出た場合は地域のインフラの整備などにも使われる。このことからも、発電、配電、保守点検などにより地元で雇用が生まれ、経済が循環しているということが分かる。

白谷雲水峡にある小水力発電を説明する屋久島町の松田賢志前環境政策課長

37年間、屋久島町の環境政策課に勤めた松田賢志前課長は「長い歴史のある自然エネだが、電気事業法をたてに町がやるのは違法だ、総務省からはやめなさいと圧力がかかったことも数多くあった」と話す。しかしこの状況は東日本大震災を境にほとんどなくなったという。

これは、東日本大震災により大規模集中型の電源の脆弱性をまざまざと体験したことが影響を与えていないとは言えないだろう。さまざまな試行錯誤を経ながらも、自然エネだけで自律分散型の電力を自給している屋久島の事例は今だからこそ大きな意味を持つ。

屋久島に脈々と流れる自然を守ってきた誇り

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2019年2月28日(木)7:00

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