確か1993年だったと思う。日本経済新聞の国連担当だった私はニューヨークの国連ビルの前を歩いていた。ふと前を見ると緒方さんがいる。
防弾チョッキ姿でサラエボ空港に降り立った勇姿とは違い物腰の柔らかい古風な日本女性といった雰囲気だった。声をかけると、アラッと言って気さくに国連難民高等弁務官の仕事の忙しさを語ってくれた。
1991年から10年間、国連難民高等弁務官をつとめたが、就任当時、日本政府内にも、女性で大丈夫かという懸念の声があったと聞く。しかし、それは杞憂だった。緒方さんの活躍ぶりは周知のとおり輝かしいばかりである。