論説コラムー障がい者雇用に求められる発想の転換

原田勝広
オルタナ論説委員

障がい者雇用促進法による企業の障害者雇用が曲がり角に来ている。SDGsやパラリンピック人気という追い風もあって社会の理解が進み、障がい者雇用数は2018年度実績でみると、対前年比で7.9%増の534、769人、実雇用率も2.05%と過去最高を記録した。一方で、法定雇用率を達成した企業の割合は前年を大きく下回る45.9%となった。納付金という「罰金」を払って法律を守らない企業を事実上野放しにしているに等しい。これ自体がゆゆしき社会問題、解決すべき社会的課題といえないか。

障がい者雇用はどの企業も苦労している。範を垂れるべき中央省庁でさえ、42年間にわたって障がい者雇用数を水増ししていたことが2018年に判明している。

元々大企業に比べ中小企業は対応が遅れている。東洋経済「CSR企業総覧」(2019年版)によると、雇用率ランキングの1位は就職・転職サービスのゼネラルパートナーズ(雇用率=20.9%)、2位が食品トレーのエフピコ(13.8%)。小回りの良さを生かして「福祉ではなく戦力」として先進的な取り組みをしている中小もあるものの、全体的にみると経営に余裕がないところが多い。大企業の場合は、ノウハウの蓄積もあり本社や工場で実績も積んできたが、進展すればするほど障害者向けの業務の切り出しの限界、職場内での軋轢、コミュニケーションの難しさが浮き彫りになってきている。

現在2.2%の法定雇用率は2021年には2.3%に引き上げられる。精神障がいは増加の傾向にあり、海外の例をみても将来的には5%程度にはなるとみられる。

こうした状況の中で、厚労省はあくまで企業の中で仕事を見つけてほしいという立場だが、本当にそれだけで問題は解決するのだろうか。確かに法の趣旨は障がい者が健常者と同一の職場で助け合っていくことを想定している。しかし、一歩踏み込み法の真の狙いを考えてみると、障がいを持つ人たちが差別されることなく、自分の能力を生かして楽しく働くことを目指しているのではないか。法律ありきではなく、障がい者の雇用問題が企業にとって解決困難なひとつの社会問題であるとの視点からとらえ直すべき時期にきている。

障がい者の自立のための施設として長い歴史のある太陽の家でもオムロンなど多くの企業が本社から離れた大分県で他社と同じ敷地に同居した形をとっている。大手企業の中には特例子会社を設立することで法定雇用率を達成している企業も多い。こうした様々な手法を駆使した多能なアプローチを模索すべきだ。

ページ: 1 2

原田勝広
オルタナ論説委員
日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。明治学院大学教授に就任後の専門は国連、CSR, ESG・SDGs論。2018年より現職。著書は『CSR優良企業への挑戦』など多数。

2020年1月20日(月)10:50

ご購読のお申し込み

alternaショップ
ページの先頭に戻る↑