インターンシップで苦しむ若者たち

北海道からのレポートだが、この問題は全国で顕在化している可能性がある

国や自治体が、緊急雇用対策としてインターンシップやトライアル雇用期間の人件費の一部を補助金でまかなう政策を積極的にアピールしている。企業にとっても人件費削減のメリットがあり、重宝しているようだ。だがそのインターンシップ・トライアル雇用で、逆に苦しんでいる若者が増えているというから驚きだ。

札幌市内に住むK君(26歳)は2009年3月、札幌市内の私立大を卒業した。数十社におよぶ就職活動もあえなく、1社の内定ももらうことができなかった。その後、相談に行った若者向けハローワークからインターンシップ制度を紹介され、建築分野商用部材の大手であるN社でルートセールス業務でのインターンシップに就くことになった。

インターンシップとは、一定期間企業の研修生として働き職場を体験する制度だ。医療分野や技術分野で一人前になるまで、どうしても一定期間の経験が必要な分野で特に採用されてきていた。昨今では、学生が主体となってインターンシップを進める団体も数多く出てきており、雇用のミスマッチングを避けるという名目で導入する企業も増えてきた。

インターンシップの同期は4名。半年間のインターンシップの中で一人だけが正社員として採用されるという当初の条件もあり、K君は必死にがんばった。その結果、営業成績でも正社員も混在している中で上位20%をキープした。直属の上司からも信頼され150社を超える顧客の管理を任されるようになった。職場の雰囲気も悪くなかったようだ。

しかし、正社員になって一年を過ぎたころ、これからさらに頑張ろうと思っていたときに異変がおきた。最初は、これまで相談相手としても頼りにしていた上司から、突然伝えられたいわれのないクレーム対応。

毎日のように罵声とともに指示が飛んでくるようになる。嫌がらせが続き、最後には、「社有車のウインカーが切れた」という報告に「お前のせいだろ。本人が責任取れ」と支社長から言われたとのこと。「もう、これ以上続けられない」そう思って退社を決意した。

インターンシップ補助金の不正受給を避けるために、一定期間の社員登用が必要な制度もある。決して営業成績が悪くなかったK君ではあったが、そもそも長期にわたり採用するつもりがN社にあったのだろうか。単純に拡販をする人手が足りなかっただけなのではないだろうか。もしそうであれば、今回のケースはかなり手の込んだものである。

K君は、現在も日中の就職活動を犠牲にしないように、夜間のアルバイトを中心に行っている。K君の履歴書には、大学卒業後、コンビニのアルバイト、インターンシップの期間と、その後のわずかな正社員の期間のみ記載され、非就業期間が増えている。(横山光紀)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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