安全運転が寄付に――「善意の循環」を生み出す保険代理店DOZO

 
DOZOの棚田信子代表

日本初の寄付ができる自動車保険加入サイトを運営する保険代理店DOZO(ドウゾ)。新しい保険の仕組みのヒントは、創業者で代表取締役である棚田信子さんが沖縄に住んでいた時に触れた「助け合い」の精神にあるという。

──DOZOが扱う「安全運転が寄付になる」サービスについて教えて下さい。

DOZOは、インターネットの保険代理店で、通常の通販型保険に「寄付ができる」という付加価値サービスをプラスして提供しています。DOZOのサイトから自動車保険に加入されたお客様が1年間無事故だった場合、DOZOが厳選した人や団体の中から、お客様が寄付先を選んで寄付をすることができます。

保険会社からいただく代理店手数料の中から、1件のご契約あたり1年間1,200円を寄付させて頂くので、他のインターネットから加入する通販型保険と、保険料や補償内容は変わりません。

──加入者は、どのような動機でDOZOを利用していますか?

加入を決めた理由として「どうせ同じ保険に入るのなら、社会や人を応援できる方がいい」と言ってくださる方が多いですね。また加入された方からは「今まで当たり前でしかなかった安全運転が誰かの役に立っていると思うと、安全に運転をすることが誇らしく思える」という声も頂いています。

従来の自動車保険は、万一の事故などのネガティブな要素を安心に変えるための商品でした。一方、DOZOの仕組みは、安心を備えながら「事故を起こさない」ことを前提に加入する保険があっても良いのではないかという発想から生まれました。

事故を起こさなかったことが、寄付という形で誰かの役に立つのであれば、それが喜びになり、安全運転のモチベーションになると考えていたので、実際にお客様からそのような声を頂き、嬉しく思っています。

──その仕組みが生まれた背景には、どのような思いがあったのでしょうか?

2004年から4年間、仕事の関係で沖縄に住んでいた経験が大きく影響していますね。現地で暮らしてみて実感したのは、人の心が優先されるコミュニティです。

合理性を追求し、まずルールが優先される東京で暮らしてきた私にとって、沖縄の生活は、眠っていた生命力が呼び覚まされる感覚がありました。

たとえば、沖縄では定期的に親しい人たちが集まって、モアイといわれる飲み会を開くのですが、皆で出し合ったお金は、大学に進学する息子がいるなど、その時に物入りな人が全部もらいます。そして、次の飲み会では、別の物入りになった人がお金を受け取る。いわゆる「講」の仕組みが残っているのですね。

近所に住んでいたオバァとの触れあいの中にも多くの学びがありました。畑で農作物を育てているオバァは、「野菜が欲しいときは、自分で採って持って行きなさい。畑にだけ挨拶をすれば良いから」と言ってくれて、私たちはいつも採れたての野菜を頂いていました。

沖縄のオジィとオバァ

「ゆいまーる」(助け合い)という沖縄の言葉に象徴されるように、現地では人と人、人と自然が共生しながら、循環する豊かな暮らしを紡いでいます。

以前から「守る」「増やす」という目的だけではなく、心が豊かになる金融商品を作りたいという思いはあったのですが、沖縄の価値観に触れたことで、「気持ちのいいお金が循環する仕組み」に、自然にたどり着くことができました。

──DOZOという社名の由来を教えてください。

「お先にどうぞ」と安全運転を行い、「どうぞ、お使いください」と寄付をする仕組みから命名しました。「どうぞ」という言葉には、沖縄の「ゆいまーる」に通じる精神、つまり相手を気遣い、互いに支えあう気持ちが込められていますよね。それは、まさにDOZOが提供する保険を使った仕組みのコンセプトそのものなのです。

──扱っている寄付先は、どのような基準で選んでいるのですか?

DOZOの選定委員会の基準にそって審査を行い、寄付先を選考しています。支援する側・される側という構図ではなく、応援することで自分自身も勇気や活力をもらえる、そんな団体や活動を選んでいます。

加入者の方に多くの選択肢をご提供できるように、現在17ある寄付先は、人権団体をはじめ、環境保護活動、登山家、プロのバスケットボールリーグや、CSRに取り組む企業を応援するプロジェクトなど、バラエティに富んでいます。

──DOZOが実現したい社会とは、どのような社会ですか?

安全運転が寄付になるDOZOの仕組みで、「どうぞ」とゆとりある運転をする方が増えれば、日本の交通事故が減るかもしれない。「心が通い合うことで問題を解決していけるような社会」の実現のために、私たちはDOZOを提供していきたいと考えています。そのためには、より多くの方にDOZOを知っていただきたいですね。

数ある保険の中から、何となく商品を選ぶことはできますが、選択肢の幅を少し広げることで、自分の行動や社会が変わるきっかけになるかもしれない。意識して選択することを大切にしてほしいと思います。

DOZOから寄付できる団体

(※2011年8月現在、トータルで17の寄付先を紹介しています)

●NPO法人オンザロード

インドに学校を創るなど、新しいカタチの社会貢献を展開している。震災復興支援のために、宮城県石巻市にボランティアビレッジをつくって活動をしている。

●     日本IDDMネットワーク

多くは子どもに突然発症する原因不明の難病「1型糖尿病」。その患者の親を中心に、『「治らない」から「治る」へ』をスローガンに根治を目指し、研究者も巻き込んだ活動を行う。

●     「日本でいちばん大切にしたい会社」のお絵かきチョークを子どもたちに

全従業員のうち7割を知的障害者が占める日本理化学工業。同社が生産するお絵かきチョークを日本と世界の子どもたちに届けます。

株式会社ドウゾ:http://www.dozo.co.jp/

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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